人材育成の道すがら

人材育成の道すがら、考えたこと・気づいたことを書き綴ります

スキル図から見たもう一つの課題

ユーグレードの安部です。研修プロデュースや人材育成に関するコンサルティングをしています。

 

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スキルマップから見たもう一つの課題は、左側はゴールがある程度見えるが、右側はゴールがないということ。ゴールがないのを習得するのは、やってもやっても満足が得られず、通常モチベーションをひどく下げてしまいます。

 

例えば、今サービス業で良く言われている「おもてなし」。社会人としての一般スキルの中でも上級クラスのスキルだと考えています。でも、最上級の「おもてなし」とは何でしょうか? 私はいつもこれを考えてます。

 

私は年に数回、各地のホテルや旅館を利用するのですが、その際にいつもおもてなしが頭の中にあります。このホテルや旅館のおもてなしはどんなものだろうと。

 

結論を先に話します。「おもてなし」というのは顧客満足度が120%(いわゆる大満足)な状態に顧客を置く、ということであれば、顧客が望んでいることをいち早く察知し、それをサービスすることが必要です。ですが、顧客が望んでいることをどうやって察知しますか? 他人の望んでいることを100%わかることは、通常できませんよね。

 

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ホテルや旅館で私は一人でのんびりすることを望んでいます。でも、あるホテルでは、マスターが夕食時におもてなしをしてくれました。寒い冬、暖かい食事とともにマスターとウィットに富んだお話をする・・・マスターとのおしゃべりは楽しかったのですが、私にとっては貴重な時間を奪われた感じが残ってしまいました。満足度は100%を少し切るくらいかな・・・

 

顧客側もいつも同じ要求ではないです。私も誰かと話がしたくなる時だってあるでしょう。そんな時はマスターのおもてなしは最高級です。同じ人でも時と場合によって要求が変わってくるのです。その要求を読み取るなど、私がサービスする側だとすれば、私にはとても不可能です。

 

おもてなしの定義が曖昧なので、仕方がないことだと思いますが、それを習得しろ、と言われた従業員はどうなるでしょうか? もし私がその立場だったら、得体のしれないものと闘わなければならないと不安な気持ちになる気がします。

 

もし、私が「おもてなし」を習得するのであれば、自分の行動の軸となる考え方を学びたいと考えます。自分はおもてなしのコンセプトをどこに置くのかということです。「おもてなし=くつろいでもらう」と考えたとしても、豪華なシャンデリアの元で豪華でフカフカなソファに座ってくつろいでもらうのか、静かで整然とした茶室でまったりと抹茶を飲みながらくつろいでもらうのか、によってやり方が異なります。

 

どちらが自分にできるおもてなしだろうか、ということを選択しながら考えていきます。そこからお客様の性別や年齢にあわせて、小道具や茶菓子などを選んで、おもてなしの準備をしていく。

 

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まずは「自分がどういう想いでおもてなすのか」をいう明確な意思が必要だと思うのです。

 

会社に勤めているのであれば、自分が所属する会社はどういう想いで顧客と対するのか、ということです。それは、経営理念に示されているはずです。従業員は経営理念に沿っておもてなしを考えていくことが必要です。どんなに豪華なシャンデリア・・・と思っても和風旅館では基本的には不可能です。

 

実は、右側のスキル群は、会社の経営理念と深く関わっているのです。

 

非常に単純化すれば、「お客様の望みを完璧に応える」という経営理念であれば最高レベルのおもてなしが必要、となるわけです。でも「お客様に喜びを与える」という経営理念であればどうでしょうか? ほんの少しのサービスであったとしても、お客様に笑顔が見えたら、それは「おもてなし」ですよね?

 

おもてなしは一例に過ぎませんし、おもてなしについて話すには少し文字数が足りないので、またの機会に詳しく話したいと考えてます。ここまでをまとめると、スキル図の右側に位置するものは、どこまで習得すれば良いのかが良くわからないスキル群です。

 

こういったスキル群を習得させるには、○○スキルは××レベルまで身につける必要がある、ということを、まず最初に明示する必要があります。この明示するベースが経営理念、その会社の在り方そのものなのです。

 

でも、研修や人材育成を依頼してくる経営者や事業のトップの方々は、これを意識されていない気がしてなりません。だからこそ高い理想像を平気で話してくるのだと思っています。まずは、どういう会社にしたいのか、どういう事業部にしたいのか、という明確なビジョンの下に人材育成があるのです。その人材育成を実行する研修があるのです。

 

私は研修について、こう考えています。

 

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それでは、また来週。来週はショッキングなニュースが今週入ってきたので、それについて話をする予定です。あるマンガもご紹介したいと思っています。