人材育成の道すがら

人材育成の道すがら、考えたこと・気づいたことを書き綴ります

年功序列は夢のまた夢

ビジネストレーナーの安部です。大分のユーグレードで、研修プロデュースや人材育成に関するコンサルティングをしています。

 

経営者にとって従業員の給与はいわゆる固定費です。コストです。売上がなくても支払わなければならないものです。しかも、現金で。

 

給与の支払い日はサラリーマンだったころはとても楽しい日でした。朝から何となくウキウキします。しかし、経営者になってからの給与支払い日は気持ちがブルーになります。今月支払っても来月支払えるんだろうか、給与を支払ったら他の請求に対して支払いができるんだろうか・・・という心配でいっぱいになるのです。

 

サラリーマンとして勤務し始めると、まず、その会社の仕事について習熟する必要があります。当然、最初はうまくいかないことが多いのですが、やがて数年経てば、仕事に対して慣れてきて、かなりのことができるようになります。

 

この期間、どれくらいでしょうか?

 

普通の企業であれば、数年、おそらく3年程度ではないかと思われます。3年もその職場にいれば、たいがいの仕事の流れと技術を覚えて、一通りのことはできるようになります。

 

その後、その会社のトップレベルになるには更に習熟期間が必要です。よほどの技術職であっても最大で10年くらいでしょうか? よく「○○3年、△△10年で一人前」みたいな言葉があります。芸術家でない限り一人前になる時期というのが必ず来ます。通常は、もっと短い期間だと思います。

 

習熟している間、従業員は自分の成長を感じます。もちろん、最初のころから比べるとグーンと大きく成長しているわけではありませんが、それでも年を経るごとにできることが増えていくので、成長を感じるのです。

 

成長を感じれば、それに応じて給与額も増額されると成長を認められた気になります。更に成長しようというモチベーションの原資になります。

 

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ただ、一人前になった後、成長はどうなるのでしょうか?

 

通常は、一人前になってからは後輩指導、部下管理、といった業務に入るので、初級管理職から上級管理職までランクの中に組み込まれます。ランクが上がるにつれ、部下の数も増加します。部下数の増加が目に見える成長であり、給与額が上がっていくのです。

 

でも、今お話した内容は、社員数が数千人いるような会社の場合です。例えば、従業員10名程度の会社だったら、まず習熟する期間が10年もかけていられません。どんなに長くても1年、性急な会社であれば半年程度で一人前になることが求められます。

 

単純に給与額でその理由を説明しましょう。

 

10名のうち1名がまだ稼げない半人前とします。10名全員の年収がそれぞれ500万円とした場合、会社全体の従業員のコストは、社会保険料等の会社負担金などを加えると最低でも7,000万円です。10名の従業員コストを賄うために残り9名の従業員が7,000万円分を稼ぐ必要があるのです。

 

その額、ひとりに付き777万円。売上高から仕入れ代金や土地代等の経費を差し引いた一年間の収益がこの金額になる必要があります。皆さん、いかがですか?

 

この場合、会社には設備が故障した修理代や新規事業のための研究費も出ないことになります。なので、通常はもっと稼ぐ必要があります。

 

10名の従業員全員が毎年給与額をアップしていくのであれば稼がなければならない額はどんどん上がっていきます。その前に会社は倒産してしまうでしょう。

 

こう考えれば、中小企業に年功序列はありえません。

 

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年功序列に代わって成果主義というものがアメリカから輸入されました。でも、この成果主義は失敗だったと新聞記事で目にします。

 

成果主義が失敗した原因の一つに年功序列があると思っています。

 

成果が上がれば給与は上がるが、成果が下がれば給与が下がる、というのが成果主義のはずです。

 

以前、成果主義を取り入れると宣言した会社の社長さんに聞いたことがあります。もし成果が下がったら給与はどうなるのですか?と。その時の答えが「下げません」。どうして?とお聞きすると、モチベーションが下がるから、辞めるかもしれないから・・・といった理由を言われていました。

 

おそらくその社長さんの考えを想像すると、次のようになると考えています。

 

「給与というのは年々上がるものだと従業員は思っている。だから、前の年より給与額が下がるのは従業員に失望感を与えるだけだ・・・失望感を与えたら、会社を辞めたくなるし、他の従業員にも悪い影響を与えるかもしれない・・・」 

 

でも、実際に成果主義のもと、給与が下がったという人の話も聞いたことがあります。その方は、成果を出せなかったのは自分の責任であり、給与が下がり役職が落ちるのは仕方がない、だからこそ、それからもっと頑張ったんだと言われました。結局その方は社長になりました。

 

給与額は、不当に低くもらうのは嫌ですし、高ければ高いほど嬉しいものです。でも、給与額が上がって嬉しいのは一時なのです。3カ月もすればその気持ちを忘れます。モチベーション維持とか退職防止とかは他の手法を使うべきであって、給与額でモチベーション操作をするのは間違っています。ましてや、年々給与額をアップするから辞めないでね、というのは、どう考えてもおかしいのです。

 

 

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ただ、既定の年数、その会社にいたから給与額を上げる、というのではないと思います。どういう成果を出したから、今回は給与額をこれだけ上げる、もしくは成果が出なかったから、今回は給与額をこれだけ下げる、ということを明確に提示し、お互いに納得できるコミュニケーションを図ることが大事だと私は思います。

 

明日は、私が体験した年齢が上の部下、年下の上司について、お話します。

それでは、また明日。

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