人材育成の道すがら

人材育成の道すがら、考えたこと・気づいたことを書き綴ります

作業効率化の前の三つの怪物

ビジネストレーナーの安部です。大分のユーグレードで、研修プロデュースや人材育成に関するコンサルティングをしています。

 

作業の効率化をした方が良いと考える人は多くても、それに立ちはだかる課題があります。今日はそれらの課題についてお話します。

 

 

 

今までこれで問題なくやってこれた

「作業の効率化? やって楽になるんだったら協力するよ」と言っておきながら、「では、この作業は今後こうやってください」という場面になったら突然出現する怪物がいます。「今まで何の問題もなかったのに、やり方を変えるのか?」という怪物。

 

作業の効率化を進めようとすると、こういった反発は必ずと言っていいほど発生します。私も反発した経験があります(汗)。

 

やっとなじんだ作業方法を変えるのは心情的に抵抗があります。変わらない方が楽だから。人間は楽な方向に流れるようにできているものです。

 

でも、作業の効率化の目的は何なのか、これを常に見直して、必ず今より楽になる、ということがわかっていれば、推し進めていく強さが必要です。きっと最初は抵抗していた人たちも新しいやり方に慣れてくれば、何ごともなかったように作業を行ってくれるようになります。ちょっとだけ抵抗に対して毅然と我慢するのが良いのです。

 

この作業は俺でなくっちゃダメなんだ

この怪物が一番厄介です。いわゆる仕事が属人化している状態ということです。

 

良くあるパターンとしては職人技があります。この作業はこの人でなければならない、この人がすることで製品の価値が上がる、といったことです。

 

それがその製品の売りであれば、それはそれで仕方がないことです。その分、その製品は大量生産ではなく匠が作る製品として、それなりの価格をつけ納品日に余裕を持たせる必要があります。

 

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でも、そうでないのに属人化した作業がある、というのは問題です。

 

それは属人化した方が良い製品やサービスなのか、判断した後、誰でもできるようにすべきであるなら、徹底したマニュアル化を行うべきです。

 

例えばエステサロンの場合。エステティシャンの中で一人だけ飛びぬけた技術力を持った人がいた場合、お客様からその人の指名が多く入ることになります。

 

指名を受けるか受けないかをまず決める必要があります。

 

受けるのであれば指名料を取る、予約制にする、など のやり方を持ち込みます。

 

受けないのであれば、不満やクレームを覚悟しながら、急ぎ他の方の技術力向上を図る必要があります。逆に飛びぬけた方は現場から管理側に入ってもらうという手もありでしょう。トレーナーとして部下を育ててもらうのです。その時は徹底的にその方の技術をマニュアル化します。

 

技術で差がつく属人化しやすい職種の場合は、技術料として高価にするか、現場を一般的な技術力にしてしまうかでしょう。後者の場合に必要となるのがマニュアルです。

 

マニュアルを嫌う人もいますが、特殊でない作業はマニュアル化して誰でも同様の品質を提供できるようにすることが重要です。まず、誰でもマニュアル化されたことができるようになって、次のステップでおもてなし等が行われると思うからです。

 

属人化すべきではないのに属人化している場合、弊害が生じてきます。

  • 弊害その1:その人がいないと作業が進まない
  • 弊害その2:他の人はその作業ができなくなる(人材が育成されない)
  • 弊害その3:その人が退職や病気欠勤になると途端に作業がストップする
    下手をすると永遠に作業ができなくなる

 

会社の仕事が永遠にできなくなるというのはあり得ない話です。会社を法人化している理由は永遠に続けるためです。逆行していることになります。

 

ただ、属人化している人に対してマニュアル化したい旨を話すと自分の仕事を取られそうに思ってしまう傾向があります。そんな時はマニュアル化することのメリット(特にその方にとってのメリット)を十分に説明する必要があります。

 

繰り返してお話ししていますが、職人技が売りの商品やサービスであれば属人化である方が良いです。そうでなければ必ず弊害が生じてくるのですから、デメリットが多くなります。

 

そして、マニュアル化にはその職人技を持つ方の協力が欠かせません。その方の技術力をできる限りマニュアル化するのが一番良いのですから。

 

ただ、自分の仕事を取られると心配してマニュアル化に反対する人も時にいます。こうした場合は、更に発展した仕事に従事することでその力を発揮してほしい・・・といった前向きな説明をすることが重要です。

 

 

作業の効率化をやっている途中でうやむやに・・・

作業の効率化をやっている途中で、通常の業務が忙しくて、つい、うやむやになってしまい、元の木阿弥、という怪物も存在します。これに対応する対策としては、「変更管理」という手法を使います。

 

IT業界では一部が実施している管理手法です。

 

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変更対象の作業、変更点、変更する作業計画、関係者、変更したことをチェックする基準点、変更スケジュール表などを事前に準備しておくのです。そしてできれば、この作業効率化に伴う関係者(経営者も含む)の会議を定期的に行うことで、うやむやになってしまうのを防ぐことができます。

 

そこで様々な課題が発生すれば、それをその会議内で解決策を練り、実施していくように行っていきます。

 

状況の進捗報告を行うことで、今の状況を関係者が知ることができます。そして担当者が通常業務で忙しい場合は、代替要員を準備するなどの対策を講じたり、担当者の通常業務そのものを他の人に担当させたりすることで、作業の効率化の業務そのものを実施し続けられるようにするのです。

 

そして、変更管理の最終地点は、変更が完了したということを皆が承認するところです。

 

最初にお話しした通り、作業の効率化をするぞ!と考えたとしても、それはとても時間がかかる、そしてたくさんの人が関係する大変な作業です。組織内の一人でできる内容ではありません。だからこそ、組織をあげて取り組む姿勢が大切だと、私は考えています。

 

そして、この面倒な作業の効率化という作業自体を成功させたら、やはり承認をしてあげることが組織全体のモチベーションを保つのに必要なことだと考えています。

 

作業の効率化、言うのは簡単ですが行うのは大変難しいものです。でも、それを行うことができれば、そこに新たなイノベーションを生む可能性を秘めています。イノベーションは全く新しく突然生まれることはありません。今までのことを少し変革することで、アイディアは生まれ、それが会社の新しい流れとなっていくのです。

 

残業を減らすだけでは、本当の改革にはならないと私は考えています。だからこそ、自分たちの作業を一つ一つ見直して、自分たちで改革していくことが、その組織の次のステップへの道なのです。

 

来週は、個人の作業の管理(タスク管理)についてお話します。

それでは、また来週。

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