専門用語の説明方法
ビジネストレーナーの安部です。大分のユーグレードで、研修プロデュースや人材育成に関するコンサルティングをしています。
昨日は専門用語の説明について、話をしました。今日は、その専門用語をどのように初心者にわからせるのかについて、話をします。
ITの用語を初心者にわかってもらう・・・というよりITを使ってもらうことを優先すると、用語なんてどうでもよいのです。でも、基本的な言葉くらいは知ってもらわないとなかなか話が先に進みません。
ただ、言葉というのは、その言葉が指す「意味」があります。これが、難しい概念である場合があります。なので、初心者に理解しやすい言葉に変える「比喩(ひゆ)」というテクニックがあります。この比喩は、講師がその専門用語を正確に理解していないと間違えた比喩を使ってしまうことがある、ということです。
昨日、WiFiの話で、電話の親機と子機の説明をしましたが、構造的には間違っています。ですが、わかりやすい例えを探すのも実は大変なのです。比喩に用いるモノは受講者(聞き手)が十分に知っているもの、という限定がつきます。
今の若い人たちにダイヤル式の電話機の話をしても通じない場合があるでしょう。時代とともにモノは変化するため、知らないモノは比喩にならないのです。私たち講師も、十数年前に使っていた比喩が、今の若い人向けの場合では使えない、という例はいくつも持っています。
そして、専門用語を説明する際に更に困るのが、意味が複数あるようなものです。ITでわかりにくさNo.1は、「OS(オペレーティングシステム)」だと私は思っています。初心者どころかプログラマーになりたい人たちにも、なかなか理解されにくい代物です。原因はOSが多機能だからです。一言では説明できないということなんですよね。
私が講師になった20年ほど前のこと。指導官から、これについてわかりやすく説明しなさい、と言われ、汗をかきながら説明した記憶がいまだに鮮明に残っています。
本当に初心者にもわかる説明はとても大変です。最近は、スマホの説明でもOSが関わるようになりました。
「スマホをこの前買ったんで、LINEを入れたいんだよね、どうすれば良い?」という質問は少し前から多くなってきました。こういう質問をしてくるのは年配の方です。若い方だけだったLINEユーザ層が年配の方まで広がっている証拠なのでしょう。でも、問題はここからです。
「スマホは何をお使いですか?」と尋ねると、「スマホ」とお答えです。仕方がないので「iPhoneですか?」とお聞きすると「iPhoneってスマホじゃないよね。俺のはスマホ」。
だいたいお判りでしょうか。
Androidスマートフォンという名前で売り出していたので、Androidはスマホで、iPhoneはスマホではない、と思っている人がいます。OSが違うので大きく操作方法が異なりますが、同じスマートフォンに分類されます。
ただ、初心者に説明しづらいのが、OSが違うということは実は機械(ハードウェア)も違った構造になっていることなのです。だから、Android用のアプリとiPhone用アプリは違うところからインストールする必要があります。作る側も別々に作ります。
どこまで説明するか、これが重要なのです。
最初の質問から、だいたいの相手のレベル感がわかれば、解答方法も変更する必要があるのは、お分かりだと思います。ただ、本当にどこまで説明するのかを見極めるのが難しいのです。
AndroidスマートフォンとiPhoneはOSが異なるのです。OSが異なるということは、機械の構造から異なっています。
ですが、機械から異なっているという説明を入れると、「え、どこがどのように違うの?」と尋ねられる場合がほとんどです。知りたいモードに入っている人に更に知りたい内容をちょっとだけ見せてしまった場合、知りたいモードに更に拍車がかかります。
まあ、スマートフォンの場合は、Androidスマートフォンはボタンが3つでiPhoneは1つですよね、と回答すれば事なきを得ます。スマホは見た目が明らかに違っててくれるので助かります。これがパソコンになると明らかな違いが明確になっていないので、説明が難しくなるのです。
話を戻せば、知りたいモードになっている人にどこまで説明するかということなのです。ただ、すべてを説明しても理解してもらえる可能性が低い場合は、不毛の説明になります。どんなに手を尽くして説明しても理解してもらえないまま、不満足で終わってしまう、ということなのです。
ひとつの技術を知るためには、元となった技術を知る必要があります。技術の積み重ねがあります。これはどの分野でも言えることです。その技術全体を説明して理解してもらうには、かなりの時間が必要になります。
講師は、かなり学習して知識は豊富です。でも、実は、知っていることをすべてお伝えするのは危険なのです。
相手が知りたいことをお伝えするのが、本当の意味での講師なのです。
もちろん、受講者の考え方そのものが間違っている場合があります。知識不足だと往々にして良くあることです。だったら、どこまで修復すべきか、ということを即時で判断しながら説明を加減していくことが必要なのです。
私も今までに何度も不毛の説明になってしまった経験をしています。私なりに「説明のドツボにはまる」と呼んで、最悪のパターンの一つに数えています。この説明レベルをどこでとどめておくのか、非常に難しい判断が求められるのです。
今日は、あまりITに詳しくない方には少し言葉が難しかったんではないかと心配しています。OSについて説明が欲しい方は、個人的にご説明いたしますので、ご連絡をください。
明日は、専門用語を使う専門家と講師についてお話をします。
それでは、また明日。