人材育成の道すがら

人材育成の道すがら、考えたこと・気づいたことを書き綴ります

相手の腑に落とし込む教え方

研修を始めて今年で21年目です。

 

いつも悩むのが、この人にとってこの教え方で大丈夫だろうか、
ということです。

 

講師によっては、決まった脚本を暗記し
それを忠実に話す、という人もいます。

 

ある意味うらやましいですが、
私は20年間、一人ひとりにマッチした教え方をしてきました。

 

なので、今まで一つとして同じ研修はありません。

 

同じ内容の研修であっても、
受講者が異なれば、
異なる研修なのです。

 

同じことを伝えるにしても
伝える相手が異なれば、
違う言葉が必要になります。

 

だから、○○講師資格というものに縁がない
人生を歩んでおります(苦笑)

 

どうしても講師資格を取ると
その際に学んだ言葉を使いたくなってしまうからです。

 

受講者一人ひとりの表情や目の動きを観察しながら
言葉を選び、伝える。

 

毎日が戦場のような感覚になる時があります。

 

間違えたら自分の首を絞めることになり
その場で即死(という気分)になります。

 

~本日の目次~

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1.腑に落ちる

「腑に落ちる」というのは日本語としては正しくない
という意見もあるようですが、
ここでは「理解する」「(心の底から)わかる」
「合点する」という意味で使っています。

 

私が一番望んでいるのが、
受講者の「腑に落ちる」瞬間です。

 

目の色がパッと明るくなり
頭の上にライトがピカッとついたように
見える瞬間です。

 

本当にはたから見てもわかります。

 

私は個人的にこの「腑に落ちる」ことについて
次のような公式を当てはめています。

 

腑に落ちる = (知識 + 経験)× 気づき

 

知識だけでは腑に落ちません。

 

知識としてその内容が頭に入って、
その関係の経験を何度か繰り返す必要があります。

 

経験だけでも腑に落ちません。

 

純粋な経験だけでは、
同じ毎日の繰り返しになるだけです。

 

そして、知識と経験があっても
気づきがなくては腑に落ちないのです。

 

経験と100%マッチした知識なんてありません。

 

微妙に異なる実体験の含む経験を経て
知識という記憶の中の要素が
メタ認知でマッチングして(これが気づき)
「あ、そうか!」となり
これが腑に落ちることなのです。

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2.気づき=メタ認知

メタ認知とは、
認知していることを認知すること。

 

もう一人の自分が
少し上の視点から物事を把握している状態を指します。

 

例えば。

 

トヨタのアクアという黒い自動車を見かけました。
続いて、ホンダのフィットという黄色の自動車を
見かけました。

 

さて、皆さんは何を考えますか?

 

トヨタ車とホンダ車という分類をする人。
同じ「自動車」というカテゴリ分けをする人。
ハイブリッド車」というカテゴリ分けする人。
移動する手段というカテゴリ分けする人。
中には色分けで認識する人もいるでしょう。

 

人によって様々な考えで
それぞれの車を見た行為を考えるわけです。

 

トヨタの黒いアクアやホンダの黄色いフィットは
非常に具体的な情報です。

 

そこから、「移動手段」という情報に結びつけて
考える際には、少し上の視点から具体的な情報を
見つめる必要があります。

 

移動手段には、他にも電車や飛行機もあります。
それらと同じカテゴリに入れるという認識です。

 

このようなメタ認知があることで
知識と経験という異なるものが合致し
腑に落ちるという現象が起きるのです。

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3.経験が少ないとなかなか腑に落ちない

私が研修をしていて一番困るのが、
若い人たちに教えることです。

 

もともと管理職研修を得意としていますから、
新卒入社の社員に対して
私の話すことは非常に難しく感じられます。

 

彼らにわかるような言葉を選んで話すのですが、
経験値が不足しており
どうしても理解してもらえないことが多々あるのです。

 

その際、総動員するのが、
私自身のメタファースキルです。

 

メタファーとは、
暗喩とか隠喩と訳されるもので
「例えば・・・」で始まる
難しい言葉を簡単にわかりやすく説明する際に
使われる修辞技法です。

 

先ほど、メタ認知で、アクアやフィットを出したような
文章のことを指します。

 

ただ、若い人は、この例えばで始まる世界を
理解するほど経験がないと
例えが例えになっていなくて
余計にわからなくなります(大汗)。

 

例えば(笑)美人女優の例として
若い人に「寅さんシリーズのマドンナ・・・」と
話しても「?」という表情なのですが、
50代以降の方に話すと
ニヤッとされる、といったことです。

 

ということは、
職場で専門用語満載のマニュアルを読んで理解する
ということは若い人にはかなりハードルが高いのです。

 

※ハードルが高いというのもメタファーですね。

 

左右の概念がない幼児には、
→←といった矢印記号は意味をなしません。

 

※矢印記号もメタファーです。

 

このメタファーもメタ認知がないと
思いつかないものですし、
相手にも伝わりません。

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4.腑に落ちるように話す

腑に落ちる = (知識 + 経験)× 気づき

 

メタファーは、この経験の部分をフォローするわけです。

 

そして、理解するということは
このメタ認知の得意領域であるのです。

 

どうしても理解してもらいたい項目については、
私は、言葉をいろいろ替えて話します。

 

そうすると、腑に落ちてくれる方が
一人、二人と増えてくるのがわかります。

 

様々な人のメタ認知が交差していきながら
腑に落ちた表情が増えていくのです。

 

中には無表情の方もいます。
特に中高年男性(笑)。

 

その方には質問を投げかけてみると
キチンとまとめて答えてくれます。

 

彼なり、彼女なりの言葉で。

 

これもメタ認知で自分なりの言葉で考えた結果です。

 

これでちゃんと理解していることがわかります。

 

5.人に教えること

後輩に教える
部下に教える
といったことが日常に発生することがあるでしょう。

 

その際、その後輩・部下がどのような経験を積んでいるのか
知ろうとしていますか?

 

このメタファーならわかるかな、
と考えていますか?

 

人に教えることは、
メタ認知同士の戦いでもあるのです(笑)。

 

時間をかけても良いのであれば、
知識だけを投げかけ、
後は経験値を積ませ、
気づきが来るのを待てば良いのです。

 

でも、数年はかかります。

 

そんなに待てない、という人は、
知識と経験値を踏まえながら、
気づきを促すように指導することが大事です。

 

一つのことが腑に落ちれば、
後は類推することが可能になります。

 

次のステップに上がったことになるのです。

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ぜひとも、人に教える時に
この数式を頭に描きながら
教えている相手のメタ認知と格闘してくださいね。

 

それでは、今日はこの辺で。