人材育成の道すがら

人材育成の道すがら、考えたこと・気づいたことを書き綴ります

万人がわかる教え方とは

万人がわかる教え方とは
というタイトルの記事ですが、
結論から申し上げます。

 

万人がわかる教え方はありません。

 

「教える」という業務には、
「教える」という立場の人間と
「教わる」という立場の人間がいます。

 

そして、「教える」立場の人間には
その人独自の教え方があり、

 

「教わる」立場の人間には、
その人独自の学び方があります。

 

教え方と学び方が合致したペアだけ
良くわかるのです。

 

もちろん、幅がある教え方ができる方がいます。
さまざまな方に対応できる教え方ができる方は
いろいろな方に対してわかりやすく教えることができます。

 

また、幅がある学び方ができる方もいます。
その方は、一部しか理解できないような教え方をする方の
話を理解することができます。

 

なので、完全一致したペアだけではなく、
理解できる人数はもう少し広がります。

 

だけど、すべての人が理解する、
ということからほど遠いのです。

 

でも、これが現実なのです。

 

 

では、具体的にどうすれば良いのでしょうか。

 

今日は、その点についてお話しします。

~今日の目次~

 

1.コーチングは万能ではない

今、リーダーがメンバーを育成するには
具体的にどうすれば良いのか、
ということが記述された本を読んでいます。

 

ベストセラーと聞いていますし、
読んでいてわかりやすく
内容もとても充実している本です。

 

私としては本当に参考になることばかりで
この本を題材に研修を組みたくなる、
そんな素晴らしい本です。

 

リーダーがメンバーを育成する手法は
基本的にコーチングです。

 

コーチングはとても素晴らしい手法です。

 

もっともっとコーチングが広がっていけば良いと
私は考えています。

 

先週、お話しした記事で
理解するには、
(知識 + 経験)× 気づき
が必要だと申し上げました。

ugrade.hatenadiary.jp

 

コーチングは基本的に「気づき」を担当している
教え方です。

 

質問を投げかけ、相手の気づきを引き出す、
というのがコーチングの主目的なのですから
当然ですよね。

 

ということでしたら、
「知識」と「経験」がそこそこある方が
教わる相手ということになります。

 

初心者にいくらコーチングをしても
プロのサッカー選手にはなりません。
基本的な動作が全くわからないですし、
ルールも知らない可能性だってあります。

 

知らない知識はいくら考えても
気づきとして表面化しません。

 

新卒社員に対してコーチングで答えを引き出せることは
新卒社員が知っている・わかっている範囲です。

 

もし、コーチングでの回答が不充分だと感じられたら
そこはリーダーが介入して技術を教えるべきです。

 

今読んでいる本もそう述べています。

 

新卒社員にただ質問するだけでは
本来の課題に対する解決策にならないケースが
多々あることになりかねません。

 

フォローしようがない失敗やどうしようもない後退を
生み出す可能性があるのです。

 

コーチングは失敗も学びの一つと捉えています。
ですが、最近ネガティブな人が増えているような傾向の中
その失敗をいくら容認したとしても
自分で自分を罰する人も出てきそうです。

 

その失敗で教わってる側のモチベーションが下がったり
自己評価が低くなってしまったら
取り返しがつきません。

 

知識や経験が少ない新卒社員にはコーチングではなく、
ティーチング(知識を教える方法)が基本だと思います。

 

もしくは、コーチングの質問をもっと細かくし
一つひとつゆっくりと丁寧にしていくこと、
その合間にフォローも入れること、
知識不足が感じられたらティーチングすること
などを行う必要があります。

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2.経験はあるが知識が少ない人

すでに50代になっているけれども
今まで「学ぶ」環境にいなかった方は
知識が少ない場合があります。

 

研修で知っているだろうと思って話しても
キョトンとされてしまうことがあります。

 

特に経営やITに関することなど
専門性が必要な分野では
なかなか知識が少ないのです。

 

こういった方々は、新しいことを学ぶことに対して
拒否反応を見せることがあります。

 

「俺なんて無理無理。物覚えが悪いから」
と言って、全面的に拒否されてしまいます。

 

教わる側が拒否する態度を取られてしまうと
教える側は何もできません。

 

学ぶという行為は
教わる側と教える側の共同作業なのです。

 

第一物覚えが悪いと言われたとしても
世の中にはもっと歳をとっても新しいことに
挑戦している方は大勢います。

 

そう申し上げても
「俺は無理」と言われるだけです。

 

そういう方でも、自分の関心があることに対しては
知識を広げたいという欲求があります。

 

そのあたりを探りながら知識の幅を広げていくと
知識は増えていくものです。

 

元来、経験値は豊富にあるので、
知識と経験を結び付ける気づきを刺激さえすれば
経験から学び取っていくことができるようになります。

 

このような方々にはコーチングが適しています。

 

新卒と同じように知識はありませんが、
新卒の何十倍もの経験値が知識を補ってくれるのです。

 

ティーチングの手法で話すと頑なに拒否されますが、
コーチングの手法で話すと面白そうに聞いてくれるのです。

 

そして、興味が湧いたところで
少しだけティーチングで知識を補っていただく。

 

ティーチングしている最中に気をつけなければならないのは、
余計な部分まで教えないこと。

 

知識が少ない年配の方へのティーチングでは
基本的に本当に抑えておくべき知識のみです。

 

補う知識は必要最低限にすることです。

 

というのは、教える側の知識は豊富にあります。
その知識は体系化しているはずで、
ある知識を学ぶには、その元となる知識が必要です。
教える側はそれを充分に認識しています。

 

ですが、教わる側はそうではありません。

 

ようやく「知りたい」という興味が湧いたところに
関連する知識が実はたくさんあって、
理解するのにたくさんの時間を要する・・・
ということがわかれば、瞬時に興味が消え去ります。

 

知識を補う場合、興味が湧いた、その部分だけの知識の
説明だけにとどめておくのが非常に効果的です。

 

その知識を理解するのに必要な元の知識は、
メタファー(比喩)を使って説明をできる限り
身近に感じさせ続けることが重要です。

 

メタファーでも理解できるだけの経験は豊富にあります。

 

ふんわり説明しても大丈夫です。

 

必要な知識を何となくイメージできる程度の理解で
充分なのです。

 

興味が湧いたら自分で答えを導けるようになります。

 

興味をなくさないことが肝要なのです。

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3.理解するきっかけ

私は数年前、目の調子が悪くなり、
本を読むのが辛い状況になりました。

 

その治療のため三週間ほど入院を余儀なくされたのですが、
入院は退屈です。

 

一番良い時間つぶしは読書なのですが、
本が読めません。

 

そこで、オーディオブックに目をつけました。

 

朗読された音声を録音したファイルを購入し、
それをパソコンやスマホから聞くのです。

 

2冊購入して、聞き始めました。

 

ところが、何度聞いても頭の中に入ってきません。

 

同じところを繰り返し繰り返し聞いても
さっぱり理解できないのです。

 

あまりの効率の悪さに、目の調子が良くなった頃、
通常の本を購入して読みました。

 

すると一気に理解が深まり、
一日で読破してしまったのです。

 

なぜ、耳で聞いて理解ができないものが
目で文字を読んだら理解できるのか。

 

そこで、人は理解しやすい形がある、
ということを知りました。

 

目からの情報、耳からの情報など、
情報を入り口や情報の形などによって、
その情報を受け付けやすい、受け付けにくいがある
ということです。

 

目からの情報。
つまり、紙に書かれた文章や映像など。

 

耳からの情報。
音声や音楽など。

 

味覚や触覚からの情報。
実際に体験した食べ物の味や食感、
モフモフやフニフニなどの触覚。

理解するには、そういったものも関係することを
その時初めて実感しました。
(頭ではわかっていたのですが、
その時腑に落ちたのです(苦笑))

 

そう言えば、私が若い頃のノートの取り方は、
結構矢印が多い図解っぽくなっているものが多かった、
と思い出されました。

 

テスト前に「ノートを貸して」といわれたので貸したら、
「書いてある内容がわからない」と
つっかえされました(苦笑)。

 

確かに。

 

マイルールで描かれた図解を理解できる人はいません(苦笑)。

 

でも、私には一番わかりやすいのです。

 

人には理解しやすい形があります。
教える側は、それに早めに気づいて
その形で示してあげることが一番です。

 

図解で理解しやすい方にはホワイトボードや
プロジェクターなどを使っての説明。

 

口頭の文章で理解しやすい方には
聞きやすい発音でゆっくりと説明。

 

動きで理解しやすい方には、
PowerPointのアニメーション機能や
身振り手振りで説明。

 

講師として前に立ちながら、
このことは常に頭の中において
話をしています。

 

そして、受講者の顔が
「腑に落ちた!」
という表情になったら一番の喜びです。

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今日は万人がわかる教え方とは
というタイトルで話してきました。

 

万人がわかる教え方はない、
という結論から入ったのですが、
あなたの目の前の教わる側が腑に落ちるために
少しでも参考になれば幸いです。

 

それでは、今日はこの辺で。