人材育成の道すがら

人材育成の道すがら、考えたこと・気づいたことを書き綴ります

今だからこその働き方改革

コロナ禍によるテレワークが呼びかけられた今年。

 

世の中には「テレワーク」という言葉すら知らなかった方も
おられるのではないかと思う。

 

要は、自宅のパソコンで会社の仕事をする、ということ。

 

インターネットにほとんどのパソコンがつながっている
からこそできること。

 

テレワーク自体はかなり昔から言われていたこと。

 

ただ、導入はほとんど進まなかった。

 

理由のほとんどは以下の通り。

  1. セキュリティの問題
    自宅のパソコンはコンピュータウイルスに汚染されているから危険。
    他にも会社で重要なファイルがインターネット
    (いわゆる会社外の環境)でやり取りされることの危険性。
  2. 労働時間の把握の問題
    自宅で勤務するので上司の目が届かない。ちょっとした家の用事を
    勤務内でしてもチェックできないという問題。
  3. パソコン環境の問題
    そもそも自宅にパソコンがない、ネット環境がない、という問題。
    若い人ほどスマホだけの生活のため、こういう方もいる。
  4. コミュニケーションの問題
    会議やちょっとした打ち合わせがしたい時、すぐに集まれない問題。

 

1.セキュリティの問題と3.パソコン環境の問題については、
このブログの本題から外れるので、取り上げません。

 

本日は、2.労働時間の把握の問題についてお話ししましょう。

 

 

1.給料の原資を考える

労働時間の問題と書くと、ついこの前まで「働き方改革」で
残業時間が大きく取り上げられていました。
もう聞き飽きるくらい「働き方改革」という言葉が出回っており、
いろいろな方が言及されていました。

 

ここで突然テレワークが急激に登場しました。

 

時々、テレビのニュースでも話題になっていましたが、
労働時間の把握ができない、ということです。

 

経営者側、管理者側からしてみると、
従業員が自宅で仕事をするとなると、
本当に仕事をしているのかが見えないから
管理ができない、ということになります。

 

また、従業員側からしてみると、
上司がいない自宅で仕事をすることが
楽、ととらえる人と、
苦、ととらえる人がいます。

 

楽ととらえる人は、自由に仕事を進めることができる、
という意見をお持ちです。

 

上司に突然仕事を振られることも(たいがいこういう仕事は
どうでも良い仕事が多い(苦笑))、
気づかいのための仕事(古い組織だと意外と多い)も
自宅では存在しません。

 

気づかいのための仕事とは、

  • 課長がやってくるまでの待機
  • 先に知っておかないとへそを曲げる人へ事前の打ち合わせ
  • 書類の決裁の順番を順守しなければならない時の決裁待ち

といったものがあげられます。

 

本来の仕事とは少し異なる、
組織をスムーズにするためだけでなく
回りに影響を与える特定の人のための仕事です(苦笑)。

 

こういったことから解放されて自由に自分の仕事ができるので
楽と感じる人もいらっしゃるでしょう。

 

ところが、苦と感じる人はそうではありません。

  • 上司からの指示がなかなか来ないので、
    指示待ちの時間が社内で仕事をするより長くなった
  • 家族から自然に話しかけられるため、
    その対応をしても良いのか、罪悪感にさいなまれる
  • 家から出ないので通勤にかかる時間を持て余す
  • 始業時間から集中できない
    周囲に気をそらすものが多すぎる

などといったことが起こりうるのです。

 

そこで、まず基本的なことを見直してみます。

 

労働に対する対価(つまり給料)の原資は何か、
ということです。

 

経営者でなくても、即答できると思います。

 

顧客からの売上です。当たり前ですよね。

 

会社の製品もしくはサービスを顧客に販売したお金の一部が
製品を作る・サービスを行った労働に対する対価となります。

 

そこで問題となるのが、「労働時間」という概念です。

 

給料の額を考える時「労働時間」×「時間給」として
計算していると思います。

 

月給制であっても、残業時間や欠勤の減額部分などは
この計算式に残業代の割合などをかけることで計算します。

 

会社に月もしくは週○○時間を働くことで、
月××円を支給する、という契約です。

 

この発想は、高度経済成長時代の製造業の考え方です。

 

どういうことか詳しく見てみましょう。

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2.労働時間の考え方

おおざっぱに言えば、
高度経済成長時代は、モノを作れば売れた時代です。

 

なので、たくさんモノを作れば、たくさんモノが売れ
会社は儲かります。

 

つまり、従業員をたくさん働かせ
たくさんのモノをを作れば
売上が上がります。

 

従業員の労働時間と売上が、
ここでは明確な関係性をもっています。

 

すべての従業員の総労働時間が向上すればするほど
売上が向上するわけです。
いわゆる相関関係があります。

 

労働時間と売上が相関関係にあるのであれば、
給料の額を労働時間と結びつける発想が出るのは
十分理解できることです。

 

ところが、ここ最近は、
こんな単純な話ではなくなってきています。

 

様々なビジネスモデルが登場し、
モノは作っても売れない時代となっているのです。

 

モノに付加価値をつけなければ売れない、
という人もいます。

 

付加価値とは何でしょう。

 

様々な定義がありますが、
ここでは顧客を喜ばせる何か、とします。

 

何かとしたのは、モノではなくサービスでも
ありうるからです。

 

この顧客を喜ばせる何かは、どうやったら生まれるのでしょうか。

 

顧客一人ひとり、喜ぶポイントが異なります。

 

つまり、モノ一つひとつに異なる付加価値をつける必要があります。

 

付加価値には「多様性」が必要なのです。

 

同じものを大量に生産をしていた頃から比べると
ずいぶんと複雑になってきているのです。

 

モノ一つひとつに異なる付加価値をつけるには
たくさんのアイデアが必要です。

 

一人でたくさんのアイデアを生み出すには限界があります。


たくさんのアイデアは、たくさんの人から生まれます。
たくさんの人の集まりの相乗効果で生まれるのです。

 

これからは、単純な労働時間ではなく
どれくらいの付加価値を追加することができたのか、
で給与額を考えていく必要があります。

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3.テレワーク時代の労務管理

こう考えていくと、単純に決められた労働時間だけを
監視しようとするのは、課題が多いことになります。

 

テレワーク時代で、眼前に部下がいない場合は、
就業時間で拘束する、ということではなく

  • どれくらい多くの量の仕事をしたのか、
  • どれくらい品質の高い仕事をしたのか

で管理する必要があるのです。

 

今は、ほとんどの会社が時間給や日給などの考えを
基本とした状況なので、今すぐに変わることはないでしょう。

ですが、すでに課題が顕在化しているので、
近いうちにこのような管理手法が普通になっていくと
思われます。

 

今までも、仕事に対する能力が高く、
与えられた仕事をすぐにこなすことができるため
残業をすることがない人。

 

こんな人は残業代で稼げないので、
のんびりと仕事をして残業をするようになります。

 

それよりは、
与えられた仕事を早く片付け、
次の仕事や新しい仕事へ時間を割けられると
会社にとっては有益です。

 

そういう人には勤務時間は短くても
手当をつけて給料額を確保する方が良いです。
会社に対する嫌厭気分を払拭するからです。

 

 

こう考えると、
単純に労働時間だけでの管理はNGだと
おわかりいただけるでしょう。

 

では、これからの労務管理はどうなるのでしょう。

 

それよりもその人と十分にコミュニケーションを取り、
会社側のこれからの方向性や従業員に対する要望と
従業員自身の思いなどを一緒に意識合わせをする、
という管理が必要です。

 

この手法は、「目標管理」という名目で
今までも行ってきた手法に似ています。

 

ですが、今までの「目標管理」は半期に1回、
もしくは1年に1回程度のコミュニケーションしか
取っていませんでした。

 

今回のは週1回もしくは2週間に1回の
コミュニケーションを取ることです。

 

そんなに短い期間だと、話す内容がない、
ということになります。

 

上司が長々と話す必要はありません。

 

従業員(部下)から

  • 仕事のプロセス
  • 仕事のゴールイメージ
  • 仕事に対するアプローチ
  • 次の仕事への意欲

といったものを話させるのです。

 

そして、
計画があいまいな場合や
他に資源や資金が必要になる場合、
具体的にどうするつもりなのか、
質問をしていくだけです。

 

上司の質問に対して応えることで
部下は成長していきます。

 

こういったコミュニケーションは
テレワークでも十分に行うことができます。

 

従業員にとっても
この手法を取るのであれば、
家族からのちょっとした用事を済ますことに対して
罪悪感は持ちません。

 

要は自分が言った内容を実現させれば良いのです。
上司とコミュニケーションを取った時の
ゴールを目指すのであれば、ある程度の時間の
自由度は確保されるのです。

 

労働時間内に、という縛りはありません。

 

これは従業員側に自分自身の管理手法が
求められることになります。

 

これについては、
また後日、お話ししたいと思います。

 

部下も自分で決めた業務内容に向けて努力し
成果を出していけば、
当然、生産性も上がってきます。

 

そして、突然始まったテレワークで
偶然にも、このような手法で仕事をする人が
増えていっています。

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4.部下からの要求にこたえられない上司

ところが、今現在の課題は、
上司(中間管理職)の対応が遅れて
仕事が進まないということです。

 

いろいろな部下から、コミュニケーションが要求されるのに
上司がIT機器への苦手意識もあいまって
回答が遅れてしまう、という課題です。

 

ここでの課題は、
「上司からの指示」を求めるコミュニケーションです。
これが問題なのです。

 

上司からの指示を求めるのではなく、
上司に提案をして仕事を進める
という方向性に変えることになります。

 

上司は多数の部下から指示を求められると
それぞれの業務内容を把握し
作業の進捗も把握し
指示を出す必要があります。

 

視覚という情報がほとんどないテレワークでは
把握するのに時間がかかってしまいます。

 

そうではなく、
大きな方向性を上司が提示したら、
それに従って部下がそれぞれ自分なりの作業を行い
時間を区切って上司にチェックをしてもらうのです。

 

そのチェックを行う時間帯が
先ほどのコミュニケーションの時間です。

 

上司は詳細な説明が欲しい場合は質問をする。
完成イメージに違和感を感じれば、
具体的にどうなるのかを質問をする。

 

こういった時間を取ることで
仕事はスムーズに実行することができます。

 

1週間後までは上司と連絡を取れないのであれば、
それまでに決めておかなければならないことが
山とあるでしょう。

 

それらを一つひとつ確認することも大事です。

 

そして、上司側も
部下を「信頼」することが大事になります。

 

テレワークでは眼前にいないので
「信頼」が一番なのです。

 

ある企業は、従業員を全員個人事業主にする
ということを発表したと聞いたことがあります。

 

個人事業主であれば下請けとして
会社の仕事をします。

 

私の言う仕事のやり方はこちらに似ているでしょう。

 

でも、個人事業主にしてしまうのは
やりすぎです。

 

このやり方は、
従業員の成長を従業員個人任せにしてしまうことです。

 

会社が思うような従業員にしたいのであれば、
やはり「雇用」することが重要だと思います。

 

それが「信頼」の原資だと思うからです。

 

同じ会社の人間である、というのが
やはり根底にないと、
テレワークで仕事を協働で行うには
無理があります。

 

5.働き方改革でも言っていたこと

働き方改革でも言っていたことがあります。

 

労働時間を短縮しても生産性を下げない、
ということ。

 

そのためには、
上司と部下がコミュニケーションをして
部下の生産性を上げる必要があります。

 

そうすることが上司の生産性を上げることなのです。

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強制的にテレワークになりましたが、
これは働き方改革を強制的に開始した
とも言えると私は考えています。

 

働き方改革の推進をテレワークがしたのです。

 

従業員一人一人の生産性を考え、
上司はコミュニケーションを取ることで
成果の品質管理を行っていく。

 

その間に、労働時間という概念はありません。
なので、短い時間で十分な成果を出す
従業員には、お得感があります。

 

社内でそれをすると、他の従業員の目があり、
やりにくさがあったかと思います。
「組織」という名のもとに
気づかいのための仕事を強要されていました。

 

ですが、テレワークとなれば、
それらから解放されます。

 

仕事を本当の意味でしたい方、
仕事を本当の意味でできる方にとっては
良い時代になってきたと
私は考えます。

 

こう思う方々が多くなってくれば、
きっとその会社はどんな時代でも繁栄するでしょう。

 

今日はとても長くなってしまいました。

 

今日、お話しした上司と部下のコミュニケーションに
ついてのより具体的なところは
また後日お話しします。

 

それでは、
今日はこの辺で。