人材育成の道すがら

人材育成の道すがら、考えたこと・気づいたことを書き綴ります

根性が足りないからできない?

チーム会社が発展するには
社長自身で人材育成をする必要がある
ということで、
これまでお話をしてきました。

 

今回は、良くあるはなしとして
「根性が足りないからできないんだ」
というテーマでお話しします。

 

人を育成する時、育成される側の根性は
必要と思われますか?

 

結論から申せば、
根性そのものは
人材育成に必要です。

 

ただし、根性が必要なのは
人材育成の一部です。

 

何もかも根性一つで済ませるのは
間違いだということです。

 

今回は以下のような内容で
お話ししていきます。

  

前回までの概要

チーム会社とは、
スポーツチームを構成できる人数規模の会社

 

残念ながら、チーム会社は、
研修をするお金がない
研修をする時間がない
という理由で、研修という形での
人材育成はできません。

 

ないないづくし社員とは、
やる気がない、自分から動かない、といった
会社にとってダメージを与える社員

 

あるあるづくし社員とは、
常にやる気があって、
会社の業績をアップさせる行動力があり
自ら考えることができる社員

 

ただ、チーム会社には
あるあるづくし社員が入社しない
労働市場で大企業へと流れてしまう

 

だからこそ、社長自ら人材育成をし
現在の社員をあるあるづくし社員へと
変貌させることが必要

 

人材育成の基本的な3つの流れ
1.現在の社員を良く観察する
2.将来の会社をどうするのか考える
3.今の社員をどう成長させるのか考える

 

人材育成の基本(教える内容で分類)
1.技術や知識(座学やマニュアルを使う)
2.仕事をするスキル(面談を中心に)
3.人との関係性構築(エンパシースキルを磨く)

 

人材育成の基礎として、
教える側(社長)と教えられる側(社員)との間に
「信頼関係」が必要

 

根性が足りないからできない?

人材育成の現場で良く耳にする言葉として
「根性が足りないからできないんだ」
というものがあります。

 

続けられた言葉は、
「今どきの若い者は根性が足りない」
です。

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根性がない猫

先日、ちょっと小耳にはさんだニュースで
宝塚音楽学校で伝統的な指導法(?)の一部が
廃止になる、というのがありました。

 

内容は言及しませんが、
これを聞いた人が
「本当に若い者は根性がない」
と言うのでは、と
つい思ってしまいました。

 

私自身、そんなに長く生きたつもりはないですが、
気づけば半世紀以上生きてました。

 

だから、半世紀前の状況だと
「仕事は盗み見て、根性で覚えるんだ」
「できなければできるまでやれ! 根性が一番」
といった言葉が普通に使われていたことを
知っています。

 

それを言われた、その当時の若い人である
私は、「根性って何?」
と思ったことを今でも覚えています。

 

仕事を盗み見るって言われても
事務作業は盗み見ることはできません。

 

机に向かって何やら書き込んでいるのを
覗き込むのは、かなり勇気がいります。

 

ずいぶん時が経って
ソフトウェア開発の会社に再就職した際は
「これは絶対に盗み見るは不可能だな」
と思いました。

 

先輩が頭の中で組み立てたプログラミングを
見ていただけでは習得できません。

 

できなければできるまで根性をもってする
ことも不可能です。

 

「なぜできないのか」の理由がわからないと
何時間も何日もそこに留まっているだけです。

 

理由を理解するには、たくさんの知識が必要です。

 

たくさんの知識を詰め込むには
かなりの時間が必要です。
時には数カ月、数年が必要でしょう。

 

ということは、
その人は納期までにその仕事をできない
というわけです。

 

今どき、
スポーツ選手でも「根性」を出して
練習に打ち込む人は少なくなりました。

 

ただガムシャラにやるだけでは
非効率だ、という理由からです。

 

そう。

 

根性という言葉の背後にある意味合いは
「ガムシャラに同じことを繰り返す」
というものがあります。

 

効率は全く考えません。

 

確かに、効率悪くても
時間をかけることができるのであれば、
どんな人でもそれなりにできるようになります。

 

天才は1万時間の練習をしている
という「1万時間のルール」があります。

 

 

人はある程度の時間をかければ
それなりに経験値を積んで
上達するものです。

 

ただし、上達したい、
という気持ちがあることが条件です。

 

何も考えずに単純に作業を繰り返すだけでは
人は上達しません。

 

単純に「ガムシャラ」にやるだけでは
上達しません。

 

そうです。
「ガムシャラにする」とペアのようになっている
「根性」では上達する可能性が低くなります。

 

根性とは?

では、根性とは何でしょうか。

 

広辞苑によると、
1.その人の根本的な性質。こころね。しょうね。
2.困難にもくじけない強い性質
とあります。

 

普段聞いている言葉からすると、
2.の意味が強く感じられます。

 

困難にもくじけない強い性質は
ガムシャラに何かをする、
ということに相通じるからです。 

 

困難にくじけない強さは、
学ぶ上で重要な要素です。

 

技術を習得するには
同じことを何度も繰り返し、
体に覚えこませる必要があります。

 

その際に辛いことも多いでしょう。

 

同じことを繰り返してもできない自分を
悔しく思ったり、
何事もなくできる同僚を羨ましく思ったり、
精神的にも辛いことが続きます。

 

ですが、その辛いことを乗り越えて
練習することで、
その技術は自分のものになるのです。

 

その際、決して忘れてはいけないことがあります。

 

先ほど
「何も考えずに同じことを繰り返すだけでは
上達しない」
とお話ししました。

 

技術が上達するためには、
一回行うごとに「振り返り」が必要なのです。

 

わかりやすいパターンとして
スポーツを取り上げます。

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シュートの練習

例えば、サッカーの練習。

 

シュートの練習を繰り返しています。

 

その際、一回シュートを打つたびに
ボールの右側を蹴り過ぎてしまった、
とか
ボールを蹴る時の力が弱すぎた、
といったことを頭の中で考えるはずです。

 

そうしていくうちに、
体のコントロールが上手くいくようになり、
思うようなシュートが打てるようになります。

 

仕事での技術も同じなのです。

 

陶工が器を形づくるために
何度もロクロを回して土を削っていくように。

 

大工が滑らかな肌の柱を作るために
カンナのかけ方を練習するように。

 

世界有数の技術者たちも
そこに到達する前に
その技術を何度も練習して
磨いていっています。

 

そういった技術を身につける際は
「根性」が必要なのです。

 

ですが、
営業職の人がアポイントが取れない、
といって「根性」を出しても
何の解決もありません。

 

中には断られても断られても
売り込みに行くことで
成約にこぎつけた
という話もありますが、
それは根性だけの話ではありません。

 

あくまでビジネス上の話ですから、
相手も成約することでメリットが
あったからできた話です。

 

デメリットしかない場合は
迷惑だけしかありません。

 

根性は、人材育成で教える内容の
一部では大変必要とされるのですが、
他の内容では邪魔でしかありません。

 

根性と相性が悪い教える内容とは

以前に教える内容を3つに分類しました。

ugrade.hatenadiary.jp

 

概要は以下の通りです。

人材育成の基本(教える内容で分類)
1.技術や知識
2.仕事をするスキル
3.人との関係性構築

 

この中で根性と相性が良いのは、
1.技術や知識です。

 

知識にも根性が必要です。

 

知識を覚えなくてはならない、
資格試験に合格しなければならない、
といった場合は、ある程度根性が必要です。

 

それ以外はあまり根性との相性が悪いです。

 

2.仕事をするスキルでは、
納期と品質の管理スキルなどが含まれます。

 

納期が迫っている時に
根性で何とかする、
というのは間違っています。

 

人には限界があり、
1カ月かかる作業を1週間でするのは
無理です。

 

それを根性だけで片付けようとするのは
問題が多すぎます。

 

3.人との関係構築では、
営業による顧客との関係性構築も
含まれます。

 

確かに気に入ってもらうために
何度も訪問というのはあります。

 

ただ、そこに根性だけで
毎日通うのは、本当の意味では
何のメリットもありません。

 

いやがられてしまっては
根性どころではありません。

 

なのに、
根性が足りないからできないんだ、
と社長から言われたら
社員は困ってしまうでしょう。

 

人材育成として根性より優先すべきなのは
「仕事をする時の考え方」を教えることです。
「人の気持ちを考える力」を教えることです。

 

納期が間に合わない、ということであれば、
人を増やす、
納期を伸ばす、
品質レベルを落とす
といったことが考えられます。

 

これが可能かどうかを検討し、
手を打っていくことになります。

 

また、納期が間に合いそうにない
原因を突き止めて
事前に対策を講じることも必要です。

 

顧客に気に入ってもらいたければ、
その顧客がどんな気持ちで
売りたい製品を使うのかを考えて
提案する方法を考えることです。

 

これらの考え方ややり方を
教えていくことで
社員は成長していくのです。

 

根性が足りないから
の一言で済ませてしまったら、
社員の成長は見込めません。

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根性は猫に不向き

 

人は教えられたように教える

人に教えることは学校では学びません。

 

だから、社会に出た時、
教えてもらったように
教えることしかできません。

 

教えるやり方の見本は
昔の先輩たちのやり方です。

 

確かにその方法でも人は育ちます。

 

現に社長もその方法で
育ってきているからです。

 

ところが、振り返ってみてください。

 

一人前になるまでに
どれくらいの時間がかかりましたか?

 

そして、今現在、
その時間をかけてゆっくり育てる
余裕がありますか?

 

今、世界はものすごい速さで変化しています。

 

今までの技術が不要になる事態が
頻繁に起こっています。

 

少し古い例えですが、
郵便で書類を送っていたのが
FAXの登場で、郵便自体が減少しています。

 

また、年賀状がメールの発達により
売上枚数が減少しているという
ニュースは最近よく耳にします。

 

会社が時代に乗り遅れないためにも
更に技術力を高めなければならない、
という切迫した気持ちを持つ
社長も少なくはないでしょう。

 

こんな時代だからこそ、
人材育成は効率的に教える必要があります。

 

教える内容に応じて
やり方を変えるのです。

 

今までのように
根性の一言だけでは
済まされなくなってきているのです。

 

また、
最近の若い人たちが持つ情報量は
想像以上に多いです。

 

昔ならばちょっと辛いことがあっても
周りの情報が入ってきませんでしたから、
ここで頑張るしかない、
と思い、何とか、
それこそ根性を出して頑張ってきました。

 

ですが、今はちょっと辛いことがあると、
他の会社はもっと楽に学んで成長させてくれる、
という情報を得てしまいます。

 

本当は、
「隣の芝生は青い」、
という状態なのですが、
若い人たちには、経験不足ゆえに
そこまで考えが及ばないケースが多いです。

 

そのため、転職してしまう、
というパターンとなってしまいます。

 

こんな状況にならないためにも
せっかく採用した人材が
辞めてしまわないためにも
人材育成の方法を習得する必要があるのです。

次回からは
教える内容に応じた
教え方についてお話ししていきます。

 

それでは、今日はこの辺で。