人材育成の道すがら

人材育成の道すがら、考えたこと・気づいたことを書き綴ります

技術・知識の教え方

今日は人材育成で多く取り入れられている
技術や知識の伝え方について
お話しします。

  

前回までの概要

チーム会社とは、
スポーツチームを構成できる人数規模の会社

 

残念ながら、チーム会社は、
研修をするお金がない
研修をする時間がない
という理由で、研修という形での
人材育成はできません。

 

なので、社長自らが人材育成をするのです。

 

ただ、学校教育では教え方を学びません。
今までは人材育成の基礎や基本を
話してきました。

 

人材育成の基本的な3つの流れ
1.現在の社員を良く観察する
2.将来の会社をどうするのか考える
3.今の社員をどう成長させるのか考える

 

人材育成の基本(教える内容で分類)
1.技術や知識(座学やマニュアルを使う)
2.仕事をするスキル(面談を中心に)
3.人との関係性構築(エンパシースキルを磨く)

 

人材育成の基礎として、
教える側(社長)と教えられる側(社員)との間に
「信頼関係」が必要

 

詳細は、ブログカテゴリ「211_チーム会社の人材育成」
からどうぞ。

ugrade.hatenadiary.jp

技術を教える基本的な考え方

入社してすぐの社員や
若手社員に対しては
会社の業務そのものをやっていく上での
技術や知識が不足しているでしょう。

 

彼らを育成する場合は、
まず、技術や知識の伝授が必要です。

 

教える技術の内容に応じて
教え方も変える必要があります。

 

  • 一子相伝のような特殊技術 
  • 一般的な技術(機械操作、製作など)
  • 知識を必要としない技術

 

同じ技術でも大きく分類すると
上記の3つに分かれます。

 

一子相伝のような特殊技術の伝授については
伝統的な教え方が今でも主流です。

 

徒弟制度があった時代、
師匠と弟子、という関係性の中
師匠が技術を見せて
それを弟子が見て真似て覚える、
という構図です。

 

実は、特殊な技術の場合、
この方法が一番です。

 

一般的な技術の場合は
技術の流れを分解して
ひとつずつ教えていく必要があります。

 

そして、あまり知識が必要ない技術は
基本的にマニュアルを利用します。

 

一子相伝の技術の教え方

こちらは伝統工芸などの職場に相当します。

 

おそらく今でも徒弟制度に近い
教え方をされていると思います。

 

ただ、今まで通りであれば、
どうしても一人前になるのに
数十年かかってしまう、
という場合は、
技術に関連する知識を教える
という項目も参考にしてください。

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獲物の狙い方を猫に学ぶ?

一般的な技術の教え方

たいがい教える人は
その技術を当たり前のように使っているため
技術を使用している間は深く考えていません。

 

よって、今から教えられる人が
教える人のようになること、つまり、
深く考えずにできるようになる、
というのが目標となります。

 

ただ、教え方となると、
「これがこうなると、あれがこうなるから
こうやって、ああなれば、こうやって・・・」
という教え方をしていませんか?

 

「これ」とか「あれ」とかは
具体的な言葉が入るとしても、
実はこれだけでは
決してできるようにはなりません。

 

大きな技術の塊があれば、
まずはそれを分解することが必要です。

 

一番わかりやすいのは、
一連の技術の流れを
いくつかのパーツに分けるのです。

 

他にも内容や習熟する期間別に分ける
というのも良いでしょう。

 

要は、一度に何もかも教えない、
ということです。

 

スポーツの技術の習得の方が
イメージしやすいと思いますので、
サッカーのシュートの技術で
お話ししましょう。

 

シュートをする際、
足先の向きや蹴る強さ、
ボールに対する足の位置など
様々なことが複雑に絡み合って
ボールはゴールの中に飛び込みます。

 

人間の体の中で言えば、
蹴る足だけでなく、支える足の位置、
体の軸、手の振り、目線などがあります。

 

他に実践でシュートが打てるようになるには、
ゴールキーパーの立ち位置や能力、
他の選手の立ち位置など
複雑な要素が絡み合いながら、
シュートコースを瞬時に考え、
それを実行できるよう体の各部へ指示する力も必要です。

 

習得する技術は何気なくしているように見えて
意外とたくさんの要素に分解できるのです。

 

あとは、教えられる側がどこまでできているか、
によって、
教える内容を選択していきます。

 

足腰が鍛えられている人材なら、
ボールの蹴り方から教えれば良い、
というようなことです。

 

逆にボールの蹴り方はできるけど、
足腰が弱いなら、
筋力トレーニングや走り込みから始まります。

 

そして、できるようになるまで
努力が必要となります。

 

技術の場合は、体に身につける必要があるため
何度も練習を行う必要があります。

 

自動車運転のことを想像していただくと
わかりやすいでしょう。

 

運転歴1カ月程度だと、まだ、
「アクセルを踏んで、ここでブレーキを踏む」
といったことを頭の中で考えながら
操作していたと思います。

 

ですが、数十年経つと体の方が自然に動いて
助手席の人と会話もできるようになります。

 

業務の技術は、
何回も何回も失敗するでしょうけれど、
練習することが必要なのです。

 

ただ、失敗するたびに、
どこを修正すべきなのか、
を必ず考えさせることをしてください。

 

スポーツの一流と言われる選手も
繰り返し練習をしています。

 

ですが、アマチュアの選手も
同様に繰り返し練習しているはずです。

 

その違いは、
もちろん練習の総時間の違いもあると思われますが、
それ以上に、失敗に対して
「振り返り」があるかないかだと
考えています。

 

「どうやったらできるようになるんだろう」
と考え続けているかどうか、です。

 

ただ、その振り返りで気をつけたいのは
「できないのは努力が足りないから」
とはしないことです。

 

練習不足であるかもしれません。

 

ですが、前回もお話ししたように
ガムシャラにするだけでは
何の成長もありません。

 

精神論で片付けるな、
と言っているわけでもありません。

 

人間ですから、気分の好不調はあります。

 

他に気になることがあれば、
うまくいくこともいきません。

 

だから、メンタル面も重要です。

 

ですが、努力や根性だけで済ますことは
避けるべきです。

 

繰り返し練習するのは当然として、
できなかったら、なぜできないのか、
自分に足りていないのは何か、
を常に考えることが重要です。

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できるようになるため練習する

知識を必要としない技術の教え方

この技術は具体的に言えば、
・決められた様式の書類の数字を
 パソコンの決められた箇所に打ち込む、
・決められたメニューの中から選ばれた注文を
 決められた通りに調理して提供する、
といったことです。

 

実は本当に役に立つ人材にするには
幅広い知識を持ってもらった方が良いのですが、
当座で役立つ人材にするために
必要最低限覚えてもらいたい技術、
と言い換えた方が良いでしょう。

 

このような技術の場合、
教える時間がもったいないです。

 

ですから、大まかな流れを伝えた後は
マニュアル通りに行ってもらうことが
重要です。

 

マニュアルを見ながら
イレギュラーが発生した時だけ
呼んでもらうようにする、
のです。

 

ただし、そのマニュアルは
「誰が見ても、すぐにわかり、
誤解が生じないマニュアルであること」
が重要です。

 

パソコンへ数値を入力する技術であれば、
表示されるパソコンの画面写真に
クリックする順番や数値を入れる箇所を明記します。

 

注文通りに作成するためには、
手順通りに何をどのくらいの大きさで
どのようにするのかが、キチンとわかるように
できれば写真や図を載せておきます。

 

マニュアル通りに行わせれば
同じことを何度もするので
自然と技術も身についていきます。

 

このマニュアルを作成するのも大変な労力がいります。

 

ただ、一度作っておくと
次の人が覚える際にも役立ちます。

 

マニュアルに対して注意点があります。

 

マニュアルはあります、
という会社は多く存在します。

 

ですが、マニュアルを更新している会社は
ほとんどありません。

 

大変な労力をかけて作成された
マニュアルですから、
作ったら安心する、
という気持ちもわからなくはありません。

 

ですが、マニュアルは「更新」すべきです。

 

わかりにくいところ、
使い勝手の悪いところ、
社会全体が変化したところなど
マニュアル自体は常に更新される必要が
あります。

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マニュアルは人材育成にも重要

技術に関連する知識を教える

知識の場合は、
基本知識と背景知識に分けられます。

 

良く新入社員研修時に知識を
詰め込んで教えるケースがありますが、
実はそこで完全理解することは稀です。

 

比較的、
基本知識はすぐに覚えるでしょう。

 

例えば、美容師で言えば、
シャンプーとコンディショナーの違いは
簡単な説明で理解してくれるでしょう。

 

ですが、
背景知識は違います。

 

シャンプーの主成分の知識や
汚れが落ちる仕組みなどについては
ある程度、化学の知識が必要になります。

 

背景知識は、この化学の知識のことです。

 

他にも美容師の場合は、
頭の骨格や髪の成分など
生物学的な要素もあります。

 

どんな業種であっても
業種内の知識だけではなく
専門的な知識が必要でしょう。

 

そこだけは大学で学ぶ知識とほぼ同じ、
というケースも多くあります。

 

背景知識は
新入社員時に詰め込んでも
理解は全く得られません。

 

実は、ある程度経験を積むことで
理解されるようになります。

 

なぜ、この技術が必要なのだろう
なぜ、こんなふうにするのだろう
なぜ、この技術は生まれたのだろう

 

こういった疑問に答えるのが
背景知識です。

 

この疑問はある程度仕事に慣れた頃に
現れてくる疑問です。

 

疑問が生じたら、
難しい知識になりますが、
少しずつでも教えていきましょう。

 

必要に応じて
通信教育などを受けさせるのも手です。

 

技術には
その技術が生まれてきた理由があります。

 

 

そんな技術の歴史を含め、
その技術の背景となっている知識群を
学ばせることで、
より技術の扱いが上達していくでしょう。

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知識の山の書籍の山

背景知識が生じてこない

ただ、こんな疑問が現れてこない
社員もいます。

 

今まで通りにすれば良い、
と思い込んでしまい、
疑問が出なかったケースです。

 

これは、実は誰にでも起こりえます。

 

その社員の能力が劣っているわけでは
ありません。

 

思いもよらなかったことを
若い新入社員から疑問に投げかけられて
そこで改めて考えた、
という経験もあるでしょう。

 

その時、知ったかぶりをしないでください。

 

どうしても新入社員の手前、
「知らなかった」は恥ずかしいかもしれません。

 

ですが、知ったかぶりをすることは、
後々の人材育成に影を落としてしまいます。

 

若い社員から疑問を投げかけられた時、
「よく気づいたなぁ、すごいなぁ」
と感心してみせてください。

 

そして、
「今まで考えたこともなかったが、
それは学んでみる必要性がありそうだ」
と自ら学ぶ姿勢を示してください。

 

この対応は2つのメリットがあります。

 

1つは、素直に褒められてうれしい、
と思わせることができます。

 

それは知識や技術をもっと深めようという
やる気にもつながっていきます。

2つ目は、社長自らが学ぼうという姿勢を見て
人はいくつになっても学ぶことが大事なのだ、
ということを教えます。

 

もう30歳になったから学ぶことはない、
50歳にもなって知らないのはおかしい、
といった声を聞きます。

 

30歳になったからと言って
学ぶものがないことはありません。

 

50歳になったからと言って
知らないこともあります。

 

人間国宝になるような技術者はいつも
「わしゃ、まだまだだ。もっと上手くなりたい」
と言っているのを良く耳にします。

 

人間、いくつになっても学ぶことはあり、
いくつになっても学び始めて構わないのです。

 

それを教える良いチャンスと思ってください。

 

まとめ

今日は、技術と知識の教え方について
お話ししてきました。

 

技術は技術の内容によって
少しずつ教え方が変わります。

 

一子相伝のような技術は
徒弟制度のように一人や二人程度に
少しずつ教えていきます。

 

一般的な技術は、
いくつかに分解して、
教えられる側の習熟度に合わせて
選択して教えていきます。

 

そして、何度も練習させることが重要です。

 

ただし、失敗した際は、
どうしたらうまくできるようになるのか、
という振り返りが重要だということ。

 

知識が不要な技術に関しては、
マニュアルを作って
それを元に動いてもらうということ。

 

そして、知識は、
業務に密接に関係する基本知識と
技術の背景にある背景知識があります。

 

基本知識は技術を覚える際に自然と身につきます。

 

背景知識は、大学で学ぶ専門知識にもなる
難しい知識です。

 

ですが、技術に習熟するにつれ、
疑問が湧いてきて、
それに応えるように身につけていく知識でもあります。

 

今日の内容は比較的どんな会社でも
実践されてきたような教え方だと思います。

 

是非とも技術力のある人材へ育成してください。

 

それでは、今日はこの辺で。