人材育成の道すがら

人材育成の道すがら、考えたこと・気づいたことを書き綴ります

見えない問題に気づくこと

NHKで放送されている「チコちゃんに叱られる
という番組をご存じですか。

 

もう4年くらい続いている番組ということなのですが、
あの番組で知った内容を覚えているのは
たぶん片手でおさまるくらいの数ですね。

 

自分の記憶力のなさを改めて思い知る
番組でもあります(笑)

 

この番組の面白さは、
問題と思っていない問題を取りあげることです。

 

よく小さな子どもが
「人が死んだらどこへ行くの?」
「どうして牛は肉を食べないの?」
といった質問をしてきます。

 

聞かれた大人は答えにグッと詰まる質問です。

 

そんな質問を次から次へと出してくるこの番組に
「質問を考える人、スゴイなぁ」と
私は素直に思います。

 

今日はそんな「見えない問題に気づく」について
お話しします。

 

1.ニーズと見えない問題

15年以上前のことです。
一時期ですが、出張が多い時がありました。

 

出張の際には、
仕事に必要なパソコンを持っていくことが必須です。

 

男性より女性の方が荷物が多いと良く言われますが、
私もそれなりに荷物がありました。

 

着替えだって、スーツとブラウス、ワンピース、
ホテルでの部屋着、ちょっとした外出着が必要です。

 

他にもメイク道具や女性特有の持ち物もあると
荷物が多くなってしまいます。

 

それプラス、パソコンです。

 

当時のパソコンは徐々に軽くなってきていましたが、
それでも数キログラムあり、
それに電源コードやマウスを合わせると
かなりの重さになります。

 

携帯電話はすでに普及していましたが、
スマートフォンがない時代です。

仕事自体は私の人生で一番忙しい時期だったので、
メールもどんどん入ってきます。

 

そのメールを確認するために
ポケットWi-Fiを起動させ、
ノートパソコンを開く必要がありました。

 

携帯電話は私物だったので、
携帯電話のメールアドレスは仕事で使っていませんでした。
なので、仕事上のメールはパソコンで処理していました。

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空港なんかは待ち時間が長いので
仕事をするにはもってこいの場所です。

 

今では当たり前ですが、
当時はパソコンを広げて仕事をしている人は少なく、
行きかう人からの視線を感じつつ、
仕事をしていました。

 

そんな時、いつも思っていたことは、
パソコンがもう少し小さく軽かったら・・・
ということです。

 

今、思い出してもため息が出ます。

 

そんな私に衝撃が走ります。
スマートフォンの登場です。

 

私が出張に明け暮れていた頃から少し経った時
スマートフォン(当時はiPhone3G)が発売されました。

 

小さく軽いパソコンができたのです。

 

メールだって、パソコンを立ち上げなくても
確認することができます。

 

ああ、これが「ニーズを満たす」ということだな、
と思ったことは鮮明に覚えています。

 

ノートパソコンといえども、ずっと持って回るのは
重いしかさばります。

 

それは問題でした。

 

だから、もっと小さく軽いパソコンがあれば、
と思っていました。

 

これがニーズです。

 

このニーズを満たすスマートフォンの登場は、
すごいことが起こるぞ、というワクワク感で満載でした。

 

もちろん、日本のパソコンメーカーでも
ノートパソコンの大きさや重さの問題は
ずっとありました。

 

ただ、そこに見えない問題があったことを覚えています。

 

その当時のノートパソコンは最新のモノで1kg強でした。

確かに軽いのですが、ACアダプタやマウス、
パソコンバッグなどを合計すると、2Kgを超えます。

 

おそらく男性なら・・・
と私は考えていました。

 

男性なら、2Kgのパソコンバッグを含めた重量は
そこまで気にならないだろう、と。

 

ですが、女性が持って回るには本当に辛いのです。

 

出張ではなく通勤時に持っている女性のバッグが
本革でA4サイズのファイルが入る大きさなら、
バッグだけで1Kg弱あります。

 

そこに様々なものが入れば、2Kg強になります。

 

背広のポケットにいろいろ入れて動く男性とは違います。

 

ここに、見えない問題が隠れていることに
日本の男性は気づかなかったんだろうなぁ、
と私は思っています。

 

2.見えない問題に気づくには

何が言いたいのか、というと、
こういうことです。

 

パソコンの重さが1Kg強でも自分たちには問題はない、
と当時おそらくパソコンを開発していた男性たちは
そう思っていたのではないか、ということです。

 

推測に過ぎませんが。

 

もっとも当時女性がパソコンを持って出張というシーンは
少なかったかもしれません。

 

ニーズはあっても需要がなかったのかもしれません。

 

ただ、そこに女性の視点があれば、
もっと面白いものが商品化されたのではないかと
思うのです。

最初に幼い子どもが問題と思ってない問題を
見つけて質問してくる、
という話をしました。

当時のノートパソコンを開発している方々には
問題と思っていない問題(大きさや重さ)を
見つけて質問してくる子どもがいれば、
もしかすると日本発のスマートフォンができたのでは、
と思うのです。

 

たらればの話ですから、
この辺でやめておきます。

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今はタブレット

誰もが問題と思っていない問題は
意外とたくさんあります。

 

それは、一つのモノやコトに対して、
立場が異なる人からすれば「問題」になることがある、
というのが避けられないからです。

 

例えば、道路にある信号機。

 

通常、何の問題もないモノですが、
視覚障がい者にとっては問題があります。

 

ですから、
視覚障がい者用に音が出る信号機があります。

 

ただ、音が出る信号機がある傍に住んでいる人が
夜勤の勤務で昼間は寝る必要がある、という場合、
その音がうるさい、という問題も発生します。

 

このように様々な立場の人に問題がない
モノやコトはないのです。

 

自分には問題がないことであっても、
Aさんには問題があるという場合は、
その問題は見えない問題になります。

 

Aさんが「○○という問題があります」
と言ってくれれば問題に気づきますが、
言わなかったり、言えなかったりすれば、
問題に気づきません。

 

※この「言えなかった」ケースは、
言ったら立場が悪くなる、言っても無視されるだけ、
といったことが考えられます。

 

また、Aさん自身が問題があるのに、
「これはそういうものだ」と我慢をしていた場合、
問題に気づくことはありません。

 

「これはこういうものだ」という考え方を
固定概念と言います。

 

 

人は、この固定概念に自分が思っている以上に
拘束されています。

 

この固定概念があまりない人が「幼い子ども」です。
だから、子どもは見えない問題に気づくのです。

 

この固定概念を外すことは、実はとても難しいのです。

 

この「固定概念を外すことが難しい」ということも
固定概念かもしれません(笑)

 

固定概念を外すのに一番効果的なのが、
「視点を変える」ということです。

 

男性なら女性の視点、大人なら子どもの視点、
こういった単純なことから、
中学生の視点、高齢者の視点といった少し複雑な立場で
そのモノやコトを見てみるのです。

 

また、役職を変えてみるのも良いでしょう。

 

部長の視点、課長の視点、平社員の視点・・・

 

時間軸を変えてみるのも良いでしょう。

 

現時点での自分の視点、20年前の自分の視点・・・
現代人の視点、江戸時代の人の視点・・・

 

空間軸を変えてみるのもトライしてみてください。

 

日本人の視点、アメリカ人の視点、中国人の視点・・・

 

これらはあくまでわかりやすい例として挙げました。
他にもたくさんの視点が存在しています。
地球上には何十億もの人がいるのですから。

 

視点を変えてみましょう、
あらゆるモノやコトを柔軟に考えてみましょう、
というと、必ずと言っていいほどこのように言う人がいます。

 

「今までこれでやってきて問題はなかったのだから
問題はない」

 

「自分は(歳を取って)頭が固いからムリ」

 

本当にそうでしょうか。
こう言うこと自体が固定観念ではないでしょうか。

 

3.見えない問題に気づくことと年齢は関係ない

固定観念と経験値は相乗効果があるもの、
と私は考えています。

 

経験があればあるほど、成功体験が多いので、
成功体験は「こうすればうまくいく」という概念を
作り出します。

 

どんな時でもどんなものでも
うまくいくモノやコトはない、
ということがわかっていても、
うまくいった成功体験が邪魔をします。

 

でも、「視点を変える」ことは
とても重要なことです。

 

それは、人と人とのつながりを強化する
コミュニケーションの場面で、
相手の立場に立つことが
とても重要だからです。

 

相手の気持ちを読む、とか
場の空気を読むといったことではありません。

 

相手の立場だったら、こう考えるよな、
ということを考えて話をすることが、
コミュニケーションを取る上で重要なこと、
という話です。

 

相手にわかりやすく伝える、ということも
相手の立場を考えることが必要です。

 

このようなことは普段からされている
と思います。

 

それを常に同じようにするだけなのです。

 

年齢は全く関係ありません。

 

常に様々な視点でモノやコトを見るようにすれば、
きっと見えない問題に気づくことが多いでしょう。

 

ただ、最初から他の視点で、というのは難しい
と思います。

 

そんな時は、よく知っている人で立場が異なる人を
想定してみるのも一つの方法です。

 

そのためにも、いろいろな人の話を聴くことが
重要です。

 

そして、その時どのように思ったのか、
感じたのか、どのように考えたのか、
を聴いて「自分との違い」を把握します。

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違いでケンカ

「自分との違い」はとても重要です。

 

自分との違いを把握するには、
まず、自分がどう考えるのかを知っておく
必要があります。

 

自分がどう感じたのかに気づき、
人が同じモノやコトにどう感じたのかを知り、
その違いを把握しておくのです。

 

そうすれば、視点を変える手助けになります。

 

これは、たくさんの経験をした
経験値が豊富な人ほど有利です。

 

自分の気持ちとその時の相手の気持ちを知るには
経験値が欠かせません。

 

年齢を重ねているから頭が固い、
と思い込まずに、
自分の経験値を活かして
見えない問題に気づくことを
是非ともやってもらいたいと思います。

 

それでも、どうしても異なる視点で
モノやコトを見ることができない、
というのであれば、
異なる立場の人に意見を聞くことです。

 

その時、しかめっ面して、
「聴いてやるから話してみろ」的な
表情をしていれば、絶対に話してくれません。

 

そこには是非とも参考にしたいから、
という気持ちを込めておく必要があります。

 

そうすれば、
「言わなかったり」、「言えなかったり」
することがなくなります。

 

私は、職場に
男性・女性、高齢者、外国の方など
さまざまな人が集まり意見を言う環境があれば、
素敵な製品やサービスを生み出すと考えています。

 

大変な世の中ですが、
きっと新しい光はすぐそこにあるはずです。

 

それでは、今日はこの辺で。