わかりやすい資料を作る
ビジネストレーナーの安部です。大分のユーグレードで、研修プロデュースや人材育成に関するコンサルティングをしています。
先週は大変失礼しました。ちょっとした操作ミスであんな風に全原稿が消えてしまうとは思ってもみませんでした。これからはリスクの一つとして考えておきたいと思っています。
さて、今週は先週のミスを取り戻すべく、PowerPointなどで資料を作る際に気をつけておくべきことについてお話ししたいと思っています。
PowerPointはご存知の通り、プレゼンで良く使われるソフトウェアです。プレゼンテーション、略してプレゼンは、いわゆる発表という意味合いが強いようですね。私はずっとプロポーザルやコンペのことだと思っていました。
発表の際、プロジェクターに映し出す資料を作成するためにPowerPointを使用する機会が増えてきたと思っています。学校の非常勤講師で行く先でも、学生が発表する時は必ずと言っていいほどPowerPointを使用します。
ただ、あまり「わかりやすい資料を作る」という点で考えられていない気がします。また、実際に作る際に、どうすればもっとわかりやすくなるのだろうか、と疑問に思うことも多くあります。
そこで今日は資料を作ることにこだわってお話ししてみたいと思っています。
ちなみに。きれいな資料を作る、ということではありませんので、あらかじめご了解くださいね(苦笑)
想定するのは、会社や学校で何らかの発表をする機会があり、PowerPointを使って資料を作成するというシチュエーションです。
1.デザインの4原則
デザインの4原則ってご存知ですか?
ノンデザイナーズ デザインブックという本で提唱されている原則です。
資料を作る際、いつも困るのが、「デザイナーではないからカッコいい資料が作れない」という悩みです。私も昔、ずっと思っていました。
でも、この本は、ノンデザイナーと謳われているように、デザイナーではない人が最低限これだけ守ればデザイナーが作ったように見えるよ、という原則です。原則なので、言われてみれば当然だよね、という内容なのですが、意外と守られていないことが多い気がします。
私はこの本と出会ったのが10年くらい前なのですが、今、本自体を見つけることができません。たぶん、間違って捨ててしまったのかもしれません。なので、少し記憶をたどりつつお話しします。
①近接
まず「近接」です。
近接とは、同じ内容のものは近くに配置し、異なる内容のものは遠くに配置する、ということ。
言われてみればその通りですよね(汗)
ただ、思いつくままに資料を作成していると、この原則が守られていない資料となってしまいます。
逆に言えば、近くに配置したものは同じ内容(仲間、種類)とみなされる、ということです。
例えば、「JRは、北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州、そして、貨物で構成されています」といった文章があるとします。「そして」をはさむことで、「貨物」だけ少し異質さを感じませんか? 近接を文章で表現すると、こういったことになります。
下の図をご覧ください。
カタマリになっているモノ同士が何らかの意味を構成しているように見えると思います。近くに配置されたものは同じ仲間とみなされる、といったことです。
更に言えば、異なるものは遠くに離すこと。そうすることでパッと見ただけで、異なるものである、ということがわかります。
②整列
続いて「整列」です。
同じ仲間はきちんと整列していると同じ仲間に見え、整列していないと異なる仲間に見える、ということです。
例えば下の図のように左に揃った図であれば、大きさや数が異なっていても仲間に見えますが、左端の位置がずれていると、同じ仲間というより一番上が親であり、二番目以降が子どものような関係に見えます。
左が揃った要素群と一段下がった要素群
情報を整理して伝えるには、整列をさせることが必要なのです。
PowerPointでは、各要素を整列させる機能があります。うまく使うことで、情報を整理した発表を行ってほしいと思っています。
③反復
反復は、強く訴えたいものがあるのであれば、反復して伝える、ということです。
文章でいうなれば、「です・ます」調と「である」調を混在させない、ということですね。最初に「です・ます」調で書いたのであれば、最後まで「です・ます」調で書くことです。
反復はリズム感をもたらせます。
発表をする時に、各スライドに同じアイコン(図やロゴマーク)を入れることで、全体的な統一感やリズム感を醸し出すことができます。
特にスライドが1枚1枚、異なる色調やデザインで書かれていると、見ている人はそちらに気を取られて、発表の中身に集中できません。
逆に話題が変わる時に、色合いを変更すると、その趣旨を伝えることができるのです。
PowerPointで作成する時は、フォントやフォントサイズ、使用されているアニメーションなども統一することで、見ている人に安心感を与えることができます。
④コントラスト
最後に「コントラスト」、いうなれば強弱です。
要素の大きさや色合いで、強弱をつけることになります。
通常の文字は、白地に黒で表現しているが、重要な箇所は黒地に白(いわゆる白抜き文字)で表現する、といったことです。また、重要な箇所はフォントサイズを大きくし、そこまで注目を浴びなくても良い箇所は小さくします。
例えば、ネットの情報を貼り付けた時、注目してほしい箇所は大きな文字で目立つ色を使い、引用したネット上のURLはフォントサイズを小さくし、印刷した資料だったら読めるレベルにとどめておきます。小さい文字のURLは見たい場合は後から見てね・・・というメッセージが表現できます。
近接、整列、反復、コントラストは、使ってみると良くわかると思います。資料を作る際にぜひ参考にしていただきたいと考えています。
2.フォントサイズ
プロジェクターに表示させたスライドと同じものを印刷して渡す場合があります。ただ、この場合、印刷しなければならない目的が明確であることが必要だと私は考えています。
同じものであれば別に印刷する必要がない場合もあります。
例えば、会場も小さくて少人数の場合、プロジェクターの文字が十分に見ることができるので、印刷して渡す必要はありません。聴衆は、プロジェクターの画面と印刷された紙との間で視線を行ったり来たりするだけで大変になります。
印刷してお渡しするのは以下の目的の場合だと思っています。
- プロジェクターで映すスライドは説明文がないので、聴衆がメモを書きやすくする時
- 後から聴衆に復習してほしい時
- プロジェクターで映すスライドの文字が小さくて見えないと思われる時
3.の場合は、賛否両論ありますが、私は否定する立場です。あり得ないと思っています。
プレゼンをする時、聴衆はどこを見るのが一番良いと思いますか?
私は、聴衆とプレゼンター(プレゼンをする人)が同じ場所を見ることが大事だと思っています。
プレゼンターが良く言うのが「ここの部分が・・・」です。でも、聴衆は、「ここってどこ?」の状態の場合が多い。。。。プレゼンターは映し出されたスライド上で、赤いレーザーポインターを激しく動かして「ここ」と言っているのですが、会場が広いとそのレーザーポインターが良く見えないのです。
プレゼンターは「ここ」を指し示したので、説明に入りますが、聴衆はその場所を探して視線をウロウロ。当然、その間、説明なんか耳に入っていません。
そのため、良くわからなかった・・・で終わってしまうのです。
プレゼンターのファンでもない限り、一度わからなくなったら聴衆は、次からはちゃんと聞こうなんて思わず、そこで聞くことを辞めてしまいます。せっかく説明するために資料を作成し頑張ってきたのに、聞いてくれないのです。残念ですよね。
そうならないためにも、聴衆とプレゼンターの視線は合わせる方が良いと考えています。そのための視線誘導です。
うまい方は、「こちらを見てください」と言ってから、しばらく間を取ります。そうすることで聴衆の視線を「こちら」に誘導するのです。その際、「こちら」はレーザーポインターで指し示す時はゆっくりとした動作で行いますし、「こちら」がどこなのか詳細な場所を言います。
例えば、「こちらのスライド、プロジェクターで映しだされたスライドをご覧ください」とか、「お手元の資料の○○ページ上段の図1をご覧ください」といったように言います。そうすることで、聴衆がどこを見ればよいのかがわかるのです。
視線誘導は大事なことでもあるのですが、今お話ししたいことはそれ以前の問題です。プロジェクターで映しだされても見えないようなスライドの資料を作る、ということです。一つのスライドにたくさんのデータや文章を書き込むために、一つ一つの文字のフォントサイズが小さくなります。10ポイントなんてナンセンスです。
でもスライド1枚に収まらないからと、小さな文字をたくさん入れる人がたくさんいます。Wordで作る資料であれば、印刷を想定していますので、それは「あり」です。ですが、PowerPointはプロジェクターで映しだしたものが「見える」というのが前提です。字が小さくて見えないから印刷するというのはおかしいと思います。
そうであれば、印刷したもので話をすればよいのです。そうすれば、聴衆はあちこちを見る必要がありません。印刷された資料を見ながら説明を聞くことができますので、ストレスフリーです。
発表だからPowerPointを使わなくちゃ、PowerPointで作ったからプロジェクターで映さなきゃ、と思っているのであれば、プロジェクターで映されたスライドだけで説明できるように作成してください。
そして、スライドだけで説明するのであれば、それなりの文字の大きさで資料を作成してください。100人を超えるのであれば40ポイントくらいのフォントサイズが欲しいです。40ポイントは結構大きいですよ。PowerPointのスライドであれば、4行がギリギリ入るくらいです。
もっと小さな会場であれば、16ポイントから24ポイントくらいであれば大丈夫だと思います。一度プロジェクターに投影してみて、会場の一番後ろから確認してみると良いでしょう。
私はいろんな場所で同じスライドを使うことがあったので、その時40ポイントを使いました。文字の量をたくさん入れられないので、言いたいことを凝縮することに力を注ぎました。
もし、そんなものだったら説明できない、というのであれば、細かい字で印刷したもので説明してください。
ただ、発表はせいぜい20分程度だと思います。セミナーのような90分くらいのものになってくるとまた別の話になりますが、通常、発表というのであれば何人かの方が順番に行うので、せいぜい一人の持ち時間は多くても20分程度だと思います。
であれば、説明できる内容には限りがあります。
言いたいことを絞って口頭で説明します。その後、詳細は紙の資料をご覧ください、ということになるはずです。
こんな資料を作ってプロジェクターで見せられたら、見えないと思って聴衆は聞くこと自体を諦めるのではないでしょうか。
http://www.jinji.go.jp/kankoku/h23/pdf/23point.pdf
※言っておきますが、この資料はパソコンの画面上でみてもらうために作られた資料だと信じています。なので、このフォントサイズなのです。このスライドが悪い、というわけでは決してありません!!ただ、このスライドをプロジェクターに映し出されて見せられたら聞きたくなくなる、と思った(私の主観)だけです(汗)
もちろん、フォントサイズを大きくすれば、言いたいことを全部詰め込むことはできません。でも、1枚のスライドに言いたいことを詰め込む、という考え自体が間違っています。スライド1枚には1つの言いたいことを書く、というのがセオリーなのです。
WordとPowerPointで資料を作る際の大きく違う点はここなのです。
3.色の使い方
スライドで資料を作成していて一番困るのが色の使い方です。私も随分と悩まされてきました。ですが、これも重要な要素の一つです。
Webサイトなどで、色の組み合わせを勉強しておくのも良いと思います。ただ、一般の方はそれだけに時間を使うことはできません。なので、手軽にPowerPointについている機能の「配色」を使うのも手です。
PowerPointは一つの配色で8色の色を組み合わせています。それぞれ、
- 背景色1
- テキスト1
- 背景色2
- テキスト2
- アクセント1
- アクセント2
- アクセント3
- アクセント4
- アクセント5
- アクセント6
というように割り当てられています。PowerPointの塗りつぶしの色などをクリックすると上部に表示されている8色がそうです。それを左側から書き出すと上記のようになります。
ただ、プレゼンで使用する色は3~4色だと言われています。私もその方が良いと思います。どういった色なのかを書くと、
- 通常の文字の色
- 重要項目の色
- サブ重要項目の色
- 背景色
です。
カラフルでなくても良いのです。背景色を白、普通の文字色を黒にすれば、後は重要項目の色とサブ重要項目の色だけを決めればよいわけです。通常、重要項目の色はコーポレートカラーなどを利用すると良いので、サブ重要項目の色は、コーポレートカラーより少しくすんだ色(彩度を落とした色=白っぽくした色、明度を落とした色=黒っぽくした色)を採用すれば良いと思います。
コーポレートカラーを使いたくない人、使えない人、コーポレートカラーがない人は、内容にマッチした色を選択(エコなら明るい緑、海関係ならブルーなど)します。事業部同士のプレゼン合戦のようなものであれば、自分の事業部のイメージカラーでも良いと思います。
一つの色を選択したら、その色から派生した色をもう一つ選択すれば、他の色は使わないようにします。
反対のことをそれぞれ説明する場合は、反対色でも良いかと思います。聴衆が見たらすぐにわかるようにすることも重要です。
そして、色を決めたら、その発表の資料全体を統一しましょう。デザインの4原則の「反復」です。
4.アニメーション
アニメーションは作っている時はとても楽しいです。ですが、基本的に多用しすぎないように気をつけましょう。
人間は動きがあるものに自然と視線を集中させます。これは、太古の昔から獲物や敵に対して視線が行くようになっているからです。本能のようなものです。
だから、アニメーションには視線を集中させる効果があります。ただ、無用なアニメーションは肝心の発表内容から視線がずれてしまうことを招きます。そんな無駄なことはやめるようにしましょう。
そして、アニメーションの種類も1種類程度に限定しましょう。文字が右から飛んできたかと思ったら、今度は左から飛んでくる・・・これが意味があるのであれば良いのですが、何の意味もなければ、聴衆が混乱するだけです。私は基本的に「フェード」一本に絞っています。
また、アニメーションを使って図形を挿入させると、今までの図形と重なってしまうことがあります。この場合、スライドをコピーして2枚同じスライドを作成し、図が重なったスライドを新しく作った方が良いです。スライドを切り替えれば、自動的にアニメーションのように表現されるので、聴衆からの見た目は変わりません。
というのが、こういった図形が重なっていると、後から編集や修正をする際に不便なのです。前面に出ている図形を動かさないと後ろの図形を修正できません。そうすると位置がずれてしまいます。
位置が微妙にずれてしまうと、スライドを切り替えた時に、図形がそれこそ微妙に動きます。前のスライドと同じ位置にあるはずの図形が動いてしまうと、聴衆は意外に気になるものです。
アニメーションは時系列で変化していく様を表現するのにとても便利です。ですから、そういった説明の時は是非使用していただきたいと思っています。第1段階、第2段階と変化していく様が視覚でわかりやすく説明されると、聴衆も理解しやすくなります。
また、重要ポイントを説明する際に、話し手のコツとして、ちょっとした間を使うことがあります。重要なポイントを話す前に話し手はいわゆる「ため」を使うのです。この「ため」は、ほんの少しの間です。この間が聴衆の集中力を高める効果があります。
この間を使う時もアニメーションを使うと効果が出ます。間が終わり重要ポイントを話す直前にスライドに文字を表示させると、聴衆は視覚と聴覚から重要ポイントをつかみ取ることができます。そして、記憶にも残るのです。
ただし、この手法は「ここぞ!」の時だけ使ってください。スライドごとに使われると、聴衆の集中力は途切れてしまいます。
アニメーションはこのように使っていくととても効果がある機能です。使い過ぎないように気をつけながら、上手に使っていくようにしてください。
5.終わりに
PowerPointそのものの操作に関しては、慣れてくるとそんなに難しいものではありません。Excelのように関数を使うわけでも、Wordのように細かい設定がたくさんあるわけでもなく、単純でわかりやすい機能が多いです。
また、最近は使う人口も増えていっています。使い方もかなり上手な方が増えています。
ただ、まだ今一つの方も多くいらっしゃいます。また、私が今日お話しした内容そのものを全く使わないという方もいらっしゃいます。白地に黒文字が羅列するだけのスライドですね。それはそれで構わないのですが、聴衆の立場から見ると、どれが縦横なのかがわからないというデメリットがあります。
是非ともわかりやすいクールな発表をしていただけるようになっていただきたく思っています。
まだまだ、コツそのものはたくさんあるのですが、必要最低限、ここは押さえて欲しい部分だけお話ししました。
先週、書いていた内容の骨子だけは残っていたのですが、細かな文章は改めて書くことになりました。でも、書き終えて良かったです(ウルウル)。先週の文字数より確実に多いので、きっとプラスアルファがくっついたのでしょう。
来週の内容は全く考えていません。少しブログをリセットして、更新回数の見直しも含めて考えたいな、と思っています。ちょうど投稿記事数も100を超えましたし、6カ月も経ちましたので、良い機会でしょう。
ただ、来週更新するのは確実です。一週間空きがあることはありません。
それでは、また来週。