人材育成の道すがら

人材育成の道すがら、考えたこと・気づいたことを書き綴ります

仕事のやり方の教え方

今日は人材育成の中で
仕事の進め方をどのように教えるのか
についてお話しします。

 

前回までの概要

チーム会社とは、
スポーツチームを構成できる人数規模の会社

 

残念ながら、チーム会社は、
研修をするお金がない
研修をする時間がない
という理由で、研修という形での
人材育成はできません。

 

なので、社長自らが人材育成をするのです。

 

ただ、学校教育では教え方を学びません。
今までは人材育成の基礎や基本を
話してきました。

 

人材育成の基本的な3つの流れ
1.現在の社員を良く観察する
2.将来の会社をどうするのか考える
3.今の社員をどう成長させるのか考える

 

人材育成の基本(教える内容で分類)
1.技術や知識(座学やマニュアルを使う)
2.仕事をするスキル(面談を中心に)
3.人との関係性構築(エンパシースキルを磨く)

 

人材育成の基礎として、
教える側(社長)と教えられる側(社員)との間に
「信頼関係」が必要

 

詳細は、ブログカテゴリ「211_チーム会社の人材育成」
からどうぞ。

ugrade.hatenadiary.jp

仕事のやり方とは

ところで、
仕事のやり方とは何でしょうか。

 

研修の提案をしに行くとき、
提案資料を作成します。

 

その提案資料を見ながら、
ぼそりと
良く言われる言葉があります。

 

「こういう資料を作れる人を育てたいんだよね」

 

それは、提案資料の作り方を知りたい、
というわけではなく
相手にわかりやすく図解や表を入れ
ポイントを押さえた資料を締め切りまでに作る、
ということ。

 

研修提案に慣れないうちは、
「あ、PowerPointの研修をしますか?」
などと返していましたが、
最近では、
「企画力」や「提案力」といったことを
望まれているんだと思っています。

 

企画力のある人が社員に一人いれば、
どんどん新しい仕事を生み出して
会社の業績は右肩上がりになる、
と思う社長は多いです。

 

ですが、企画力「だけ」ある人材は、
はっきり言って使いものになりません。

 

企画力や提案力とともに
そのアイデアを実現していくスキルが
必要なのです。

 

 

一から起業した社長であれば
経験されたと思いますが、
イデアを実現するためには
様々な課題を乗り越えていく必要があります。

 

目標を定め、少しずつ確実に歩を進め、
大きな課題が発生すれば、
解決のための道筋をつけ
周りの協力を取り付け
難題を乗り越えていくスキル。

 

ここでいう仕事のやり方とは、
このような着実に実現していくことを指します。

 

起業をする、という大きなものでなくても
普通に仕事をしていると出くわす
課題やトラブルを
上手くチャンスに変えたりかわしたりして
仕事をやり遂げていくことができる能力。

 

これは、学生時代でも身につく能力です。

 

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例えば、部活動。

 

大会などで勝つために
どのような練習をし、チームワークを醸成するのか、
といったことは同じ能力です。

 

学校生活でも、
高校受験や大学受験などに打ち勝つために
どのような戦略を練り、
どのように進めていくのか、
といったことも同じ能力です。

 

ですが、残念ながら、
監督やコーチの言う通りに行動しただけ、
学校や塾の先生の言う通りに学習しただけ
では、この能力は身につきません。

 

身につかないまま社会に出てしまい、
社長や上司の言う通りに動く社員となります。

 

素直で聞き分けの良い社員ですから、
大きな問題を起こすこともなく
定年まで働き続けることができます。

 

ただ、変化が激しい現代社会でも
自らを変えず、考えることもせず、
社長や上司の指示待ちの状態が
ずっと続くことになります。

 

自ら考えて動くような社員にするには、
まず、自分の仕事をきちんとこなせることが
重要です。

 

そのための仕事のやり方を学ぶ必要性があるのです。

 

※仕事で使う技術や知識については
前回お話ししていますので、
そちらを参考にしてください。

 

仕事には、
・納期
・品質
・コスト
の考え方が重要です。

 

納期がない仕事もありますが、
それでも毎月決められた締め日が
存在していると思います。

 

それだけでなく、年間を通しての業務もあります。

 

いわゆる「締め切り」です。

 

モノを作る業種でなければ
あまり品質を気にしない、
という社員もいます。

 

ですが、サービスであっても
今はサービス品質が問われる時代です。

 

「おもてなし」はサービスの
最高級の品質を表します。

 

最後に「コスト」です。

 

意外と
社員は自分にかかるコストを認識していません。

 

昔、言われた言葉で印象に残ったものがあります。

 

「会議に10分遅刻したら、
会議参加者全員の10分の給与泥棒だ」

 

1カ月手取り19万2千円の社員がいるとします。
※計算しやすいようにしています。

 

1カ月20日働くとして、1日が9,600円。
1日8時間働くとして、1時間が1,200円。
1時間は60分なので、1分が20円。

 

10分遅刻すれば、1人200円の損。
会議室に10人いれば、2,000円の損。
2,000円の利益を上げるには、
粗利率20%としたら10,000円ほど
売上をあげなければなりません。

 

こんな計算ができるのかどうか、です。

 

今までは教えるのではなく管理だった

今までは「管理」ですべて行ってきました。

 

管理職と言われる方が、
納期や品質、コストを管理するのです。

 

今までは、と言いましたが、
今でも、と言うべきでしょう。

 

今なお、管理職は現存し、
管理職はこの3点を主に管理します。

 

ですが、チーム会社には管理職はいません。

 

人数が少ないので、管理だけする人は
到底置けないのです。

 

一人ひとりがお金を稼ぐ仕事につかなければ
会社が成り立ちません。

 

ここが大企業とは大きく異なる部分です。

 

なので、社長が管理職を兼任しています。

 

でも、その管理を各社員に任せることができたら、
社長は他の業務を行うことができます。

 

だからこそ、仕事のやり方を
社員ができるようになるのは
とてもありがたいことなのです。

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「管理」は実は大変なのです。

 

建設業やIT業界などでは
プロジェクトマネジメントと言って
管理する技術について
学ぶ機会があります。

 

チームのスケジュール管理や
品質管理、
コスト管理をするやり方の
世界標準すら規定されています。

 

PMBOKという名前で、
プロジェクトマネジメントのノウハウが
記述されています。

 

PMBOKとは、
Project Management Body of Knowledgeの略で
直訳すればプロジェクト管理の知識体系です。

 

ただ、PMBOKを学んだと言っても
すぐにマネジメント、つまり管理が
できるのか、と言えば、難しいでしょう。

 

PMBOKはあらゆる業種に合わせて
作られているので、自分の業種や業務にあう
やり方は自分で選択する必要があります。

 

これを社員に学ばせるには
時間がかかり過ぎて
あまり効果が出ないでしょう。

 

そこで、ここではポイントのみを
お伝えしていきます。

管理ではなく社員自ら責任を持たせるために

社長が管理するのではなく
社員自ら自分の仕事を管理するには、
先ほどの「納期」「品質」「コスト」を
その社員の範囲内で管理する能力を
身につける必要があります。

 

PMBOKには他にもありますが、
私は必要最低限この3つだと考えています。

 

これらは実際に社員にやらせることをしないと
社員は自分の仕事に対して責任を持ちません。

 

重要なのは、その「社員の責任の範囲内」で
社員に管理する能力を身につけさせる、
という点です。

 

会社の全責任を負うのはもちろん社長です。

 

ですが、社長一人がすべてを背負っては
会社は発展していきません。

 

だからこそ、社員一人ひとりが自分の範囲内の
責任を負うことで、会社の土台を支えるのです。

 

ただ、責任だけを負わせるのでは
社員は社長についていきません。

 

責任がある、ということは
実は「自由」がある、ということです。

 

逆に、
自由がある、ということは
その結果に責任を持つ、ということです。

 

そのあたりを十分に社員に理解させておく
必要があります。

 

そして、
自由にさせるのは、「やり方」が中心であり、
「会社の方針」や「方向性」は社長が
全責任を持つ、ということです。

 

会社は人の集まりであり、
人が集まるところは何かの「想い」があります。

 

ここでいう想いは、会社の目的を指します。

 

この目的の部分は社長が責任を持ちます。

 

ですが、その目的に到達するための
やり方は社員が責任を持つのです。

仕事のやり方の教え方

では、仕事のやり方を教えるには
具体的にどうするのでしょうか。

 

「納期」「品質」「コスト」それぞれに
対して教え方が少しずつ異なります。

 

それらについてお話しします。

納期を管理する能力を身につけさせる

納期とは、つまり時間管理です。

 

どんな仕事でも
いつまでに仕上げる、
という時間制限があります。

 

いつかできたら良いな、
という仕事は、仕事ではなく
芸術の範疇でしょう。

 

ただ、それが
○○カ月後なのか
○○日後なのか
○○時間後なのか、
はてまた○○分後なのか
によっては人の動き方が異なります。

 

○○時間後や○○分後の場合は、
「急ぎの仕事」に含まれ、
他の仕事より優先されて実行されます。

 

えてして
急ぎの仕事は突然現れます。

 

任せていたはずの仕事が終わってないため、
急遽自分でやる羽目になったとか。

 

締め切りを忘れていて
慌てて取り組んだとか。

 

ただ、いつも
急ぎの仕事ばかりしていると
身も心も疲れてしまいます。

 

なので、できれば急ぎの仕事は
必要最低限に抑える必要があります。

 

必要最低限とは、
顧客からのクレーム、
突発的な災害や事故、
というものです。

 

先ほど例に挙げた
頼んでいた仕事ができていない、や
締め切りを忘れていたなどは
時間管理ができていれば
防ぐことができます。

 

その時、時間管理の訓練にちょうど良いのが
○○日後が締め切りの仕事です。

 

締め切り日を記述したカレンダーを見ながら
その仕事ができる時間を算出します。

 

ひとつの仕事しかしていない社員は
ほとんどいないと思いますので、
他の仕事との兼ね合いを考えるのです。

 

通常、人は締め切り日が直前に来ると
取りかかる習性があります。

 

夏休みの宿題を夏休みが終わる日に仕上げる
といったようなものです。

 

ですが、前もって準備をしておくと
締め切り日前でも
仕事を終わらせることができるのです。

 

例えば3日後が締め切りの場合、
社長は社員に対して、
今日は何をするのか、
明日は何をするのか、
明後日は何をするのか、
と準備の内容を確認することで
社員は時間管理の方法を学ぶことができます。

 

そして、必ず毎日チェックします。

 

一日の終わりに、
今日する予定だったことはできたのか、
できていたら、明日は何をするのか、
できていなかったら、
今後どうするのか、
といったことを確認していきます。

 

これを繰り返していくと
納期を管理する能力が身についていきます。

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品質を管理する能力を身につけさせる

品質を管理するには、
納品するモノについて
どこまでするのか、を把握させる
ということが一番大事です。

 

例えば、先に企画書や提案書の話をしましたが、
企画書や提案書は時間をかければかけるほど
手の込んだものを作ることができます。

 

ですが、本当にそこまで手の込んだものを
顧客が望んでいるのか、と聞くと
たいがいは
「お客様のためになるから」となります。

 

顧客の望みを表現するために
作りこむのは良いです。

 

ですが、顧客が望んでいる以上のものを
作りこむのは自己満足でしかありません。

 

品質を管理する能力を身につけさせるには、
まず、何ができ上がったら、
もしくは、
何がどうなったら
この仕事は完了なのかを
明確にさせることが重要です。

 

いわゆる「仕事の終わり」を明確にさせます。

 

実は意外とここが不明瞭のまま
仕事をし始めていることが多いのです。

 

○○をしなさい、
と指示を出すことがあります。

 

その際に「すること」を指示します。

 

最初に○○をして、次に△△をして・・・

 

仕事の指示はこのように
手順を指示することが多い時は
指示の出し方を変更します。

 

つまり、
××という作業をしなさい、
やり方は任せる、
という指示をすることが必要なのです。

 

もちろん、その社員のレベルに応じて
指示する必要があります。

 

すでに何度もその作業を完了させた経験を持つ
社員には、やり方を任せてみることです。

 

いきなり任せるには少し不安、
という場合は、
どのようにやるのか、
やり方を確認していくのです。

 

やり方の中には、
今まで通りの方が効率的の場合もあります。

 

ですが、今まで通りよりもっと
効率的な方法があることもあります。

 

やり方の場合は、
細かくチェックする、
というよりも、
必要最低限可能かどうか、
というチェックにします。

 

要は法律に違反していないかどうか、
道徳に違反していないかどうか、
といったことをチェックするだけです。

 

業種によっては法律で
きめ細かく決められているやり方も
ありますので、
それを大きく逸脱することはNGです。

 

ですが、そうでなければ、
新しい方法を「やってみる」というのもあり
なのです。

コストを管理する能力を身につけさせる

コストの考え方を習得するには、
2段階あります。

 

1つは原材料などの目に見えるコスト。

 

製造業などはモノを作るため、
原材料がいくらなのか、
といったことは比較的簡単にわかります。

 

また、工場の電気代や水道代、
地代や家賃など、一般家庭にもある
コストも比較的理解しやすいでしょう。

 

地代や家賃の場合は、
机1個当たりのスペースの地代家賃を
計算するのもわかりやすくなります。

 

例えば、1人分の作業をするスペースが
月額10,000円、といった風にすると、
もうけをこれ以上確保しないと
会社が損する、と理解しやすくなります。

 

もう1つは、社員の給与そのものです。

 

社員にとって給与はコストではないのですが、
会社にとってはコスト(というより支払う
現金)です。

 

ただ社員は、なかなかこれが理解しにくいのです。

 

実際には社員1人に対して、
給与額+各種社会保険料のコストが
会社にかかっています。

 

これを理解しているのは、社長と
人事担当者か経理担当者くらいでしょう。

 

これらは、まず知識として
社員に伝えておく必要があります。

 

これらの知識は、もし万が一
会社を退職することになっても
非常に役立つ知識です。

 

労災や労働保険、
健康保険や年金がどのようになっているのか、
比較的若い時から
教えておくと良いでしょう。

 

この時、「会社が負担してやっているんだ」
と上から目線での言葉ではなく、
事実を淡々と伝えます。

 

もしくは知識を伝える際、
社長ではなく、
経理担当者や顧問の社会保険労務士
話してもらうのも手です。

 

社長自らが話すと、
恩着せがましい、といったイメージに
受け取られがちです。

※信頼関係があるとマイナスイメージは
半減するのですが・・・

 

そして、コストを習得させるには
何度も社員自ら計算させることが大事です。

 

概算で構いませんが、
コスト計算ができるようになれば、
あらゆるところで役立つようになります。

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教える際の注意点

教える際の細かな注意点は、
今までお話ししてきました。

 

ここでは全体を通しての注意点を
お話ししたいと思います。

 

お気づきだと思いますが、
仕事のやり方の教え方は、
一人ひとりの社員のスケジュールや
やり方をチェックする、
という方法です。

 

未熟な社員であればあるほど、
その頻度は多くなります。

 

社長自身がプレーイングマネージャーである
チーム会社では、
社長の負担が増大します。

 

ですから、
人材育成を行う社員の優先順位を
まずは考えていただきたいのです。

 

できれば未熟な社員よりも
経験豊富な社員から育成するのです。

 

仕事のやり方そのものは
経験豊富な社員の方が断然優位です。

 

ですが、今まで社長の指示に従った
仕事のやり方をしていた社員ですから、
戸惑いも大きいと思います。

 

しかし、社長に対する信頼度は
長い期間一緒に働いてきただけに
高いものがあるはずです。

 

経験豊富な社員は新しいことに慣れるのに
時間が若干かかりますが、
できなくはないはずです。

 

そして、その仕事のやり方の教え方も伝え、
更に若い未熟な社員への育成時には
協力してもらうようにする方が
現実的でしょう。

 

また、社員へ仕事を任せるタイミングですが、
「徐々に」がキーワードです。

 

一度に任せてしまうと失敗した時に
大変ですし、
「丸投げされた」というネガティブな
イメージを植え付ける可能性があります。

 

それよりも
少しずつできるようになったら
任せていくことが肝要です。

 

そして、重要な点が一つ。

 

社長自身が仕事のやり方をきちんと
マスターしておく必要がある、
ということです。

 

納期が守れない、
品質が低いままである、
コスト意識が薄い、
という状態では、社員は育ちません。

 

今すぐすべてができる、
というのが難しければ、
社員に学んでいるところを
是非とも見せてください。

 

学ぶ社長を見て、
社員は学ぶことの大切さを学び、
成長することを喜ぶようになるでしょう。

まとめ

本日は、仕事のやり方の教え方について
お話ししてきました。

 

社員一人ひとりに社員の作業を
管理する能力を身につけてもらうことが
仕事のやり方を教える最大の目的です。

 

それができるようになることで、
社長の手間がずいぶんと省けます。

 

そのために
「納期」「品質」「コスト」の3点から
それぞれ教え方をお伝えしました。

 

納期では、自分のスケジュール管理ができるよう
毎日作業進捗のチェックをする。

 

品質では、仕事の終わりがどんなものなのかを
意識させる。

 

そして、やり方を任せるために、
どんなやり方をしているのかを
必要に応じてチェックする。

 

やり方のチェックは違法でない、
モラルに反しない、という程度のチェックに
とどめておく。

 

コストでは、
原材料の費用や光熱費などのコストを学んだあと、
社員自身の給料と各種保険料の会社負担について
概算できるようにする。

 

そして注意点として、
社長自身が仕事のやり方を学んでおくこと

 

本日は、当ブログ最大の文字数を記録しております。

 

そろそろこれで終わりにしますね。

 

もっと具体的に、詳細に
今後お話ししていく予定ですので、
今後とも何卒よろしくお願いします。

 

それでは、今日はこの辺で。