人材育成の道すがら

人材育成の道すがら、考えたこと・気づいたことを書き綴ります

人間関係の構築の教え方

今日は人材育成の中で
人間関係の構築をどのように教えるのか
についてお話しします。

 

特に人間関係を構築するのが
苦手と思っている社員、
コミュニケーションがうまくない社員を
対象に教える場合を取り上げます。

 

前回までの概要

チーム会社とは、
スポーツチームを構成できる人数規模の会社

 

残念ながら、チーム会社は、
研修をするお金がない
研修をする時間がない
という理由で、研修という形での
人材育成はできません。

 

なので、社長自らが人材育成をするのです。

 

ただ、学校教育では教え方を学びません。
今までは人材育成の基礎や基本を
話してきました。

 

人材育成の基本的な3つの流れ
1.現在の社員を良く観察する
2.将来の会社をどうするのか考える
3.今の社員をどう成長させるのか考える

 

人材育成の基本(教える内容で分類)
1.技術や知識(座学やマニュアルを使う)
2.仕事をするスキル(面談を中心に)
3.人との関係性構築(エンパシースキルを磨く)

 

人材育成の基礎として、
教える側(社長)と教えられる側(社員)との間に
「信頼関係」が必要

 

詳細は、ブログカテゴリ「211_チーム会社の人材育成」
からどうぞ。

ugrade.hatenadiary.jp

人間関係が一番難しい?

会社を辞める最大の理由は
社内の人間関係だと言われています。

 

それは、同僚同士との人間関係だけでなく
社長や上司との人間関係、
顧客との人間関係も含まれます。

 

人間関係の構築に関しては
小学校から道徳の時間などを通じて、
また学級活動などを通じて
学んできているはずです。

 

ですが、
学校の場合、同じ年ごろの人間相手であり、 
年上の相手は「先生」や「親」といった
保護してもらえる対象です。

 

年齢層の幅広い社会で通用するとは思えない、
と普通の人は思ってしまうため、
学校で習ったことを活かせていないと
思われます。

 

また、
長い社会人生活を経験している人にとって
人間関係が一番大切だと口を揃えて言います。

 

その大切な人間関係の構築が
上手くいかず退職してしまうのは、
何故なのでしょうか?

 

人間関係を構築するのは
生まれ持った性質ではなく
「技術」です。

 

これをエンパシースキルと呼びます。

 

共感力とも言われているスキルですが、
相手の立場や感じ方を想像しながら
感じ取る技術です。

 

技術であれば、習得することができます。

 

ですが、意識して習得しようとしてこなかった人が
とても多いと感じています。

 

それは、日本社会が難しくなかったからです。

 

昔から「言わなくてもわかるだろう」という言葉を
何度か聞いたことがあります。

 

男女限らず、自分の気持ちを察するのが当然、
ということです。

 

同じ日本人なんだから、そのあたりはわかるよね、
といった言葉も別の表現として存在します。

 

同じ立場、同じ民族だから、
感じ方は同じである、
という思想的な感情は確かにありました。

 

 

様々な民族がいる国家の場合は、
言葉を通じてでしか分かり合えない、と
比較的幼い頃から
人間関係のための学習をしているようです。

 

ですが、日本は若干そのあたりを
あまり重視していなかったように思えます。

 

最近は見直しがなされていますが、
私が子どもの頃は、あんまり学校で学ぶことは
ありませんでした。

 

だから、自分の考えをきちんと話すこと、
人の考えをきちんと聞くこと、
相手の立場を考えることなどが
上手くできないまま社会に出ている人が
多いと私は思っています。

 

なので、相手のことを考えずに、
思いついたことをそのまま伝えてしまい、
トラブルになる、
相手に対してハラスメントをしてしまう、
といったことが発生してしまいます。

 

また、逆に相手のことを考えすぎて
がんじがらめになってしまい、
ストレスを強く感じて体調を崩してしまう、
ということも発生しています。

 

まずは、
人間関係を構築するという意識を持つこと
が必要です。

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社員が引っ込み思案で
なかなか人前で話せない、
コミュニケーションが苦手で
上手く人間関係が作れない、
という場合でも、

 

技術を磨けば
人間関係を構築できるのだ、
と伝えてほしいと思っています。

 

そして、人間関係を構築する支援を
してほしいのです。

 

ちょっとした支援で
社員はできるようになります。

人間関係を構築するという意識

まずは、人間関係を構築する、
という意識を持たないことには
先に進めません。

 

ところが、先日大学生と話をしていると、
数十歳もの歳の離れた人と話すことは
怖いと感じていることがわかりました。

 

確かに、大学生や高校生にとっては
家族や先生以外で
数十歳も年の離れた人と話す、
ということは生まれて初めての経験です。

 

怖いと感じるのは、
歳が離れた人のことを良く知らないからです。

 

最初に社長のことを良く知ってもらうことが
とても大事です。

 

良く知ることができれば、
怖くなくなるはずです。

 

また、なかなか人とじっくり話す、
という経験がない熟年社員もいるでしょう。

 

今まで顧客と話すのは営業に任せきりで
長年製品作りに没頭してきた
という熟年社員も
なかなかコミュニケーションを苦手としています。

 

ですが、今後その高い技術を会社のために
引き継いでもらう必要があり、
そのためにも若い社員へ教えることが必須になります。

 

ただ、熟年社員はその方自身が学ぶ時には
「オレの背中をみて仕事を覚えろ」的な
人材育成をされてきていますので、
話さなくても若い人に教えられる
と思い込んでいるかもしれません。

 

しかし、全く話さない状態では
人間関係は構築できません。

 

熟年社員にも
人間関係を構築する意識をもってもらう
必要があります。

人間関係構築のためのコミュニケーション

人間関係をスムーズにするには
コミュニケーションが欠かせません。

 

そこで、コミュニケーション研修を希望される
企業がたくさんあります。

 

私も何度もコミュニケーション研修を
企画してきました。

 

ただ、コミュニケーションは
研修で机上で学ぶものでは当然ありません。

 

なので、研修を企画する際は
ワーク中心、体験型研修を多く企画しています。

 

ですが、効果があったのか、
と言えば、かなりの疑問が残ります。

 

コミュニケーションは
1対1
1対多
といったケースの違い、
そして、相手がどんな人かによって
使われる技術が大きく異なります。

 

研修でいくら体験しても
その体験と同じシチュエーションが
現場では起こりえない、ということです。

 

コミュニケーションの課題は、
その場その場で対応の仕方が異なり、
基礎を学んでも応用力が効かないということです。

 

そこで、苦手意識がある人は
ますます他人と話すことがなくなり、
話す力が失われていくことになります。

 

もう一つ課題があります。

 

コミュニケーションは会話を中心としており、
後から思い返す際に
正確に思い返せない、ということです。

 

ああ言った、こう言った、で、
後々のトラブルの素になるように、
その時の正確な会話を再現するのは
不可能です。

 

それでも、コミュニケーション力を鍛えるために
基本から教えていく必要があります。

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コミュニケーション力をアップする教え方

基本を身につけさせる

コミュニケーションの基本とは
何でしょうか。

 

もちろん、良く言われる「あいさつ」は
肝心です。

 

ただ、あいさつもキチンと相手を見て
声とともに明るい表情や会釈が必要です。

 

人間関係の構築には、
このあいさつに続いて
天気の話や昨日のプロ野球の結果など
話が続くことが必要です。

 

いわゆる雑談です。

 

コミュニケーションが苦手な人は、
この雑談が苦手です。

 

何を話せば良いのかがわからないのです。

 

あいさつの練習だけをさせても
雑談ができなければ、
本当にあいさつだけで会話が終了します。

 

コミュニケーション力アップのために
少しの間、あいさつの後に雑談を取り入れます。

 

その日の天気の話やニュースの話題から
お互いの好きなモノや趣味、
興味のあることなどを話します。

 

政治的な話がしにくい場合は、
芸能ニュースなどでも良いでしょう。

 

変化があれば、それが雑談の話題になります。

 

そうすれば、良く知った相手となり、
怖いという感情はなくなるでしょう。

 

そこが重要なのです。

 

仕事上でトラブルが発生した時、
怖いと感じていなければ、
身近な人と感じてくれていれば、
すぐに報告に来てくれるでしょう。

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また、慣れてくれば、
好きなことだけでなく、
嫌いなことやモノ、苦手なモノなども
話題にします。

 

一人の人間として
さまざまな面を見せることが
関係性を強めていきます。

 

そして、このように人間関係を構築する
ということを
かなり慣れてから話すのです。

 

そして、
雑談を広げていくためにも
新聞やテレビのニュースなどを見ること、
必要と思われる情報の入手をすることなども
合わせて伝えましょう。

 

社長との人間関係ができ上がれば、
それを足掛かりに
他へと広げていくことができます。

 

なかなか上手く話せずに
何を考えているかわからない
若手や新入社員、
話すのが苦手な熟年社員などに対して
コミュニケーションの基本と
必要性を是非とも説いてください。

対応力がない社員には

あいさつなどのコミュニケーションの基本は
できているが、
なかなか顧客との会話が続かない、
対応力がない社員に対しては、
次のように教えていきます。

 

対応力を身につけさせるためには、
その場の目的が何なのかを
明確にしておくことです。

 

例えば異業種交流会のような場で、
初対面の方々と話さなければならない時、
あんまり話すのが苦手な社員だと
気おくれしてしまうでしょう。

 

ですが、
「どんな人たちがいたのか後で教えてくれ」
とそこに参加するための目的を明確にします。

 

異業種交流会であれば、
まず名刺交換をします。

 

その名刺を見て、
・相手の会社の主な業種、製品・サービス
・その中で相手の主な職種(営業、製造など)
・相手が得意としている点
・相手が苦労している点
などを起点に
「ひたすら聴く」ということを
行わせるのです。

 

さすがにその場ではメモを取れませんので、
聴いたら、その内容を自分の言葉で言い返す
ということをさせます。

 

そうすることで記憶に残りやすいからです。

 

人間は自分の事を話すのが大好きです。

 

聴かれたことに答えるうちに
だんだんと熱が入ってきます。

 

当然、聴きながら、リアクションも
忘れてはいけません。

 

リアクションもコミュニケーションです。

 

そうしているうちに
名刺交換の時間は過ぎてしまうでしょう。

 

名刺交換の時間を無事に過ごせたという自信は、
社員に大きな成長を与えます。

 

これを何度か繰り返せば、
徐々に反応が上手くなっていくのです。

 

営業として顧客へ向かわせる時も、
その顧客を訪問する目的を明確にします。

 

単なるあいさつ訪問だけなのか、
顧客の何を聞き出すのか、
といった目的を明確にします。

 

ただ、顧客のニーズを引き出す、
といった漠然としたものはNGです。

 

顧客○○さんの
最近の困ったと思ったことを聞く、
というくらい具体性を持たせます。

 

持ち帰った話が会社の事業に
直接役立たないかもしれませんが、
聴いてきたことについては
褒めてください。

 

「ばかやろう!
そんなことを聞いてどうする?!」
などと反応することはNGです。

リフレクションを必ず行わせる

そして、忘れずにさせるのが、
リフレクション(ふりかえり)です。

 

こういったリアクションしたら
相手の表情が和らいだ
とか
こういった質問したら
相手が困った顔をした
といったことを
忘れないうちに記録するのです。

 

できれば、その記録を見ながら
社長と一緒に話をすると良いでしょう。

 

コミュニケーションが苦手な社員は
相手の顔が困った表情になったなど
ネガティブな態度を示した際、
自分の無力さを感じ取ってしまいがちです。

 

良くありがちなのが
ネガティブな態度がネガティブな感情を
想起してしまって
相手を怒らせてしまったのでは、
と思い込んでしまうことです。

 

そこで社長が注意喚起してほしいのです。

 

ネガティブな態度と
ネガティブな感情は必ずしも一致しない
ということを。

 

質問内容に正確に答えようとして
考えこんでしまったあまり、
つい眉間に皺を寄せた、
という場合もあります。

 

私はこれを
「認知をシフトする」
と言ってます。

 

元は認知行動療法から我流に拝借してます。

 

社員から話を聞きながら、
「お前の質問に真摯に対応しようと
していたことから生まれた表情」
とポジティブな方向性へと向けるのです。

 

そうすることで
社員は悪い方へと考えず、
自信も生まれてきます。

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まとめ

人間関係の構築が苦手な人は
たいがいコミュニケーションが苦手で
対人関係に悪い印象があり、
自分に自信が持てない場合が多いです。

 

それには、次のように教えていくと
良いでしょう。

 

1.あいさつの次に続く雑談にする話題を
たくさん集めさせ、会話が続くようにさせます。

 

2.大勢が集まる名刺交換会などに参加させ
名刺交換した相手の話を聴きだします。

 

3.その状況を終了直後に記録し、
自分なりにリフレクションします。

 

4.社長は、リフレクションに基づいた
話を聴き、ネガティブな認知をシフトします。

 

コミュニケーションに苦手意識を持ち、
あまり話さない社員でも、
家族(特に両親)や学校時代の友人とは
普通に話しているはずです。

 

要は「慣れ」と「自信」なのです。

 

会社で、
社会人としてコミュニケーションが取れる
慣れと自信がつけば
話せるようになっていきます。

 

本日は、
コミュニケーションに苦手意識がある
社員に対して、
人間関係の構築について教える教え方を
お話ししてきました。

 

それでは、今日はこの辺で。